神と喧噪の南アジアから

「イスラム差別」抗議にヒンズー教徒も参加 インド・デモ拡大の理由

松井聡・ニューデリー特派員
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改正国籍法への抗議デモには子供も多く参加していた=ニューデリー郊外のジャミア・ミリア・イスラミア大近くで2019年12月23日、松井聡撮影
改正国籍法への抗議デモには子供も多く参加していた=ニューデリー郊外のジャミア・ミリア・イスラミア大近くで2019年12月23日、松井聡撮影

 インドで2019年12月11日に成立したイスラム教徒以外の不法移民に国籍を認める改正法に対する抗議デモが続いている。初期のデモは不法移民のさらなる流入を警戒する北東部の地元住民が中心だったが、その後全国に拡大したデモの中心は差別に反対するイスラム教徒や、世俗主義を重要視するヒンズー教徒だ。

 政府はデモを食い止めようと、数千人を拘束したり、インターネットの遮断や集会禁止などの措置をとったりしたが、収束する気配はない。モディ政権は世論を読み間違ったと指摘する声もある。背景を探った。

「あきらめムード」だったイスラム教徒

 「モディ政権には何も期待できないばかりか、何かに反対すれば復讐(ふくしゅう)される恐怖がある。今はただおとなしくして、モディ政権が過ぎ去るのを待つしかないという気持ちだった。政権に対するあきらめだ」。イスラム教徒の人権活動家シャヒーン・カウサルさん(44)は、改正国籍法の問題が起こるまでイスラム教徒を覆っていた雰囲気をこう説明する。

 インドの人口の8割はヒンズー教徒で、イスラム教徒は14%に過ぎない。2014年にヒンズー至上主義のモディ政権が発足すると、ヒンズー教徒が神聖視する牛を「食べた」などと疑われたイスラム教徒が襲撃される事件が増え、歴史教科書はヒンズー至上主義者を取り上げる内容に改訂された。

 さらに、モディ政権が19年春の総選挙で圧勝して2期目に入ると、▽イスラム教徒の男性が「タラク(離婚)」と3回唱えれば離婚できる慣習を禁止(7月)、▽イスラム教徒が多数の北部ジャム・カシミール州(当時)の自治権を剥奪(8月)、▽ヒンズー至上主義者らが破壊したモスク(イスラム教礼拝所)の跡地にヒンズー教寺院の建設を最高裁が認める(11月)――など、「ヒンズー化の進展」といえる事案が相次いできた。

 ただ、イスラム教徒による抗議デモは散発的なものにすぎなかった。全国規模で連日という改正国籍法でのデモは明らかに今までとは違う規模のものだ。モディ政権が提案した国籍法改正案は19年1月にも下院は通過したが、上院での支持を得られず断念した。この時には、北東部で抗議デモが起きたものの、最終的な改正に至らなかったため全国的なうねりにはならなかった。

 民間シンクタンクのベテラン研究員は「今までのイスラム教徒の抗議は、それほど激しくなっていなかった。だからモディ政権は、国籍法改正で…

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松井聡

ニューデリー特派員

1982年生まれ。2005年に入社し、福井支局、大阪社会部などで勤務。宗教と民族の多様性、発展と貧困、政治の混乱などさまざまなキーワードでくくれる南アジア。今何が起き、そしてどこへ向かうのか。将来を展望できるような情報の発信を目指します。