Social Good Opinion

対話が呼び起こす未来へのまなざし

宮﨑紗矢香・Fridays For Future Tokyo
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「Fridays For Future Tokyo」のメンバー宮﨑紗矢香さん=東京都千代田区で2020年1月8日、岡本同世撮影
「Fridays For Future Tokyo」のメンバー宮﨑紗矢香さん=東京都千代田区で2020年1月8日、岡本同世撮影

 今月のテーマは「環境問題」。最近メディアで大きく報じられている海洋プラスチック汚染の問題やオーストラリアの森林火災など、今世界各地で環境問題が顕在化しています。そのような中で、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんのように、さまざまな国でZ世代が声を上げています。今月は「気候危機」に焦点を当て、その解決に向けて具体的に行動を起こしているZ世代の声をお届けします。

スウェーデンの少女が喚起する問いかけ

 今や世界中にその名が知られるグレタさん。米タイム誌で、2019年の「今年の人」に選ばれるほど注目を集める存在です。その認知度が高まる一方で、グレタさんを巡ってはさまざまな賛否両論が渦巻いています。彼女の発言の言葉尻だけを捉えて問題の根本を見失うのは残念ですが、科学的な事実だけを訴えても、異を唱える人は同様に存在するでしょう。では、気候危機に脅かされる時代を生き抜くにあたって、私たちに要請されてくる姿勢とはいかなるものでしょうか。

 19年、グレタさんによって私の人生は変わりました。そこでの出会いや経験を財産に、大学で集大成として執筆した卒業論文をもとに、その手がかりを導きたいと思います。

私の原体験

 19年2月、スウェーデン「持続可能な開発目標(SDGs)」視察ツアーに参加し、企業やスーパー、大学などで先進的な環境対策の事例を見て刺激を受け、帰国後の就職活動ではSDGsを推進する日本企業を受けました。けれど、利潤追求が第一で環境対策は二の次という企業が多く、面接で「君の思うようにはいかない」と言われたときには、「誰一人取り残さない」SDGsのバッジを光らせながら、目の前の就活生の言葉をないがしろにしている矛盾に憤りを覚えました。

 そんなとき、5月に新聞記事でグレタさんを知りました。彼女がプラカードを掲げて立つ写真をよく見ると、その場所が2月の視察ツアーの際に通り過ぎたストックホルム議会前と同じであると気づきました。また、「あなたたちは誰よりも自分の子供が大切だと言いながら、子供たちの目の前で彼らの未来を奪おうとしている」というスピーチが、就活で大人に抱いた憤りと重なり、自らも理不尽な世の中に対し愚直に声をあげようと決意し、グレタさんの学校ストライキに端を発するムーブメント、Fridays For Future Tokyoに入りました。

「気候のための学校ストライキ」と書かれた手作りのボードを手に持つグレタ・トゥーンベリさん=ストックホルムで17日、八田浩輔撮影
「気候のための学校ストライキ」と書かれた手作りのボードを手に持つグレタ・トゥーンベリさん=ストックホルムで17日、八田浩輔撮影

 【毎日新聞2019年5月20日 奪われる未来 若者、怒れ 対策訴え学校スト

 Fridaysの活動に夢中になっていた8月、私はある人に「あなたは人を刺している」と言われました。相手を突き刺す言い方では人は動かないと指摘され、それ以降は自分が感じた疑問にふたをせず、けれど独りよがりになることなくどう発言すればいいのか、絶えず自らに問いかけるようになりました。

正しさが対立を深めるとき

 9月は、日本だけでなく世界一斉で大規模なデモがあり、その直後にグレタさんが「How dare you!(よくもそんなことが)」と鮮烈な一言を放ったことで、Fridaysは一躍注目の的となりました。すると話題に上ることが増える一方で、批判も多くなりました。11月、東京都議会に提出した「気候非常事態宣言」の請願書を持ち街頭で署名集めを行った際、「あの子は精神的に病んでいる」と誹謗(ひぼう)中傷する人、「氷は解けていない、増えている」と気候変動に懐疑的な意見を持つ人がいました。私は反論したい気持ちが高ぶりましたが「刺している」という言葉がよみがえり、思いとどまりました。

 【毎日新聞2019年9月21日 僕たちの未来がなくなる」 気候変動対策強化求め若者ら東京・渋谷でデモ

気候変動対策の強化を求めてデモ行進する大学生ら=東京都渋谷区で2019年9月20日午後6時3分、吉田航太撮影
気候変動対策の強化を求めてデモ行進する大学生ら=東京都渋谷区で2019年9月20日午後6時3分、吉田航太撮影

 グレタさんの考えに反対する人たちに対して、私たちは「地球を守ることが正しい」と考える立場です。けれどその正しさが逆に、その問題を身近に感じることを阻んでいるのかもしれないと感じ始めました。グレタさんを揶揄(やゆ)する側も支持する側も正しさの水準で、一方の発言を他方がたたくような二極化した議論に陥っているとしたら、それは同じ穴のムジナです。権力に対し、反権力で対抗しても対立を深めるだけかもしれません。

「小さい主語」で対話する

 私はFridaysの活動に身を投じる傍ら、卒業論文を通して社会運動を行う自分を反省的に見つめ直してきました。その模索の末に、2者間の対立から脱する手立てとして、対話を試みることが素朴にも大事だと気づきました。イデオロギーは異なっていても、お互いがその考え方に至るプロセスに目を向けないと本当に対立しているかはわかりません。対話を続けることで、対岸の火事に見えていた他者の問題も自分に地続きであると気づく瞬間があるからです。

 そして対話をする上で、私は「小さい主語」で語ることを心がけるようになりました。外野からこうすべきだと、したり顔で大人を批判するのではなく、「私」の経験から出発して言葉を紡ぎ、なぜ今の思いを抱くに至ったのか、大胆にかつ愚かにおごらずに、自分を捨象せず語ることを忘れないようにしています。

 気候危機に具体的な対策は必要です。けれど、どんな正しい対策も相手の実感が及ばない限り、行動にまでは至りません。必ずしも正しさに裏付けされた理論だけではなく、根拠のない真理を迷いも含めて言葉にできる存在も、人の心を動かすためには必要なのではないでしょうか。

 未来の分岐点となる20年。グレタさんだけでなく、私たち一人一人が異質な他者との対話を試み、どんな言葉を紡ぐかが問われています。

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宮﨑紗矢香

Fridays For Future Tokyo

1997年生まれ。大学1年時にボランティア「子ども食堂」に出会い、団体の代表が口癖のように持続可能な開発目標(SDGs)を連呼していたことから、大学3年の春休みにSDGs国際ランキング1位(2016~18年)のスウェーデンへの視察ツアーに参加。その後、就職活動で日本の(目標に配慮しているかのように見せかける)SDGsウオッシュにさいなまれていたとき、グレタ・トゥーンベリさんを知りFridays For Future Tokyoの一員に。19年9月26日にはNHK「クローズアップ現代+」に出演。立教大学社会学部社会学科4年。