東京都心で「地方創生」する店 売り上げ増の理由

上野央絵・元毎日新聞編集委員
  • 文字
  • 印刷
東京都千代田区のオフィス街で、佐賀市の産品をさかなに約50人が盛り上がった「ちよだいちば」のちょい飲みイベント=2019年12月13日、ちよだいちば提供
東京都千代田区のオフィス街で、佐賀市の産品をさかなに約50人が盛り上がった「ちよだいちば」のちょい飲みイベント=2019年12月13日、ちよだいちば提供

 全国の市町村が月替わりで地元自慢の「食」をPRするアンテナショップが東京の中心、千代田区のオフィス街にある。「食と農で都会と地方をつなぐ」が目的のNPO法人、農商工連携サポートセンターが運営する「ちよだいちば」で、オープンから5年半で北は北海道稚内市から南は鹿児島県奄美大島まで、23道県、50を超える市町村や地区が参加した。

 同店では2019年度、かつてなく売り上げが伸びているという。店長が現地入りして地元の人とじかに触れ合うようになったのがきっかけだ。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も駆使してコミュニケーションを密にし、地方創生の新たなキーワード、「関係人口」づくりに一役買っている。実情を追った。

ネットに載らない生の地元情報でPR

 「佐賀のごま屋さんが作ったからいラー油ありますよ。お客さんならきっと気に入ると思います」

 11月27日昼、皇居にほど近い千代田区神田錦町のオフィス街の片隅。「ちよだいちば」の朝比奈千穂店長が弁当を買いに訪れた常連客の男性に声をかけた。「からいけどうまい。汁なし担々麺みたいな味。ごまの香りを楽しみながら味わえる。何にでも使えます」

 19年最後の月間ご当地まつり初日。佐賀市から届けられた野菜、果物、海苔(のり)、大豆や海藻の加工品、お酒、お菓子、珍味などの特産品約60点が30平方メートルの店内に所狭しと並ぶ。「この佐賀牛のカレーってどんな感じ?」。別の男性客に聞かれ、「佐賀で28年やって焼き肉屋さんが一つ一つ手作りしてます。特別に肉多めにしてもらってます」

 朝比奈さんのうんちくは約3週間前、2泊3日の現地視察で、20近い事業者と取扱商品を巡って話し合う中で仕込んだもの。

 視察後にはスタッフを集めてサンプルを試食しながらプレゼンし、情報共有済みだ。「ネットに載らない生の情報を事業者に代わってダイレクトに伝えていただいている。事業者が乗り移ったかのよう」。現地視察で朝比奈さんに同行し、初日にあわせて佐賀市から駆け付けた市商業振興課の山下貴之さん(36)が感心した。

 ご当地食材をふんだんに盛り込んで出す日替わりの弁当は、ちよだいちばの売り上げの「けん引役」。正午を過ぎるとレジ前には弁当を求める行列ができる。注文を待つ客向けに、商品の動向を見ながら毎日フェイスブックに弁当の写真を、ご当地のPRをまじえた食材の紹介と共に投稿する。同…

この記事は有料記事です。

残り2307文字(全文3307文字)

上野央絵

元毎日新聞編集委員

1967年生まれ。91年毎日新聞社入社。水戸支局、政治部、西部報道部(沖縄担当)を経て水戸支局次長、政治部副部長、佐賀支局長、オピニオングループ編集委員を務めた。東京と地方をつなぐ「関係人口」となるべく、東京と盛岡の2拠点生活に加えてこれまでの赴任先の定点観測を実践中。