子年に聞く

改憲「数の力」では押し切れない

森英介・元法相
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森英介氏=吉田航太撮影
森英介氏=吉田航太撮影

 2016年9月から約3年間、衆院憲法審査会の会長を務めた。

 憲法審査会は国会のほかの委員会とは性格が異なる。少数会派も含めて国民の代表としての各会派がみなテーブルについて議論をすべきだという思いで運営にあたった。

 野党だけを責めることはできない。自民党の都合で開かなかった時期もある。憲法審査会に関しては与野党双方が「テーブルにつく」という気持ちを持つことが第一歩だ。

「数の力」では押し切れない

 法案を審議する他の委員会では審議を重ねた結果、与党が採決に踏み切ることはある。しかし、憲法審査会では与党が数の力で押し切ることはできない。憲法は法案と異なり、最後に国民投票がある。数の力で押せば国民投票で過半数を得ることが難しくなる。

 その前提があるのだから、憲法改正に反対であっても出席してほしい。憲法改正を進めるべきではない、という意見も国民の大切な意見だ。国民の意見を代表して述べることは国会議員の権利であり、義務だと思う。

政局とは切り離して

 与野党の対立が激しくなると、全く関係のない憲法審査会まで止まってしまうことがある。野党が政府を追及するのは当然だが、なぜ憲法審査会を巻き込むのか。

 私が会長を務めていた当時、与野党の幹事同士には深い信頼関係があった。自民党の幹事だった中谷(元・元防衛相)さんや新藤(義孝元総務相)さんは涙ぐましいほどの努力をしていた。そして野党の幹事も誠実にそれに応えていた。ところがいつも野党幹部の判断で動きが止まってしまい、残念な思いをした。

 野党はよく、国会が「波静か」でなければ憲法審査会で審議できないと言うが、まったく問題がない「波静か」な時などそうはない。憲法に関しては政局と切り離して考えてもらいたいと強く思っている。

最初は周到に

 17年に憲法審査会の視察で英国のキャメロン元首相に会った。キャメロン氏はその前年にあった英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票で失敗したことについて「説明が不足していた」と非常に悔やんでいた。

 国民投票で可決されるには相当、研究と工夫がいると感じた。国民の納得を得るためには発議するまでのプロセスも非常に大…

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森英介

元法相

1948年生まれ。90年衆院初当選。副厚生労働相、法相、自民党憲法改正推進本部長、衆院憲法審査会長などを歴任。衆院千葉11区、当選10回、自民党麻生派。