不安抱かせる米中首脳「指導者としての資質」

田中秀征・元経済企画庁長官
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田中秀征氏=宮武祐希撮影
田中秀征氏=宮武祐希撮影

 トランプ米大統領、習近平中国国家主席、そしてイランのハメネイ師や北朝鮮の金正恩委員長、加えてプーチン露大統領。現在、世界の危機を演出している指導者たちはどこか似たところがある。それは衣の下にヨロイを着ているというか、常に臨戦態勢にあるところだ。第一次大戦の偶発的な“サラエボの銃声”のように、ちょっとしたことで大きな戦闘が始まる可能性を感じさせる。

 第一次大戦後のベルサイユ会議を主導した政治家の一人、ロイド・ジョージ英首相は回顧録でこう語っている。

 当時のヨーロッパの指導者たちは「指導者として大ヘマをおかしたと白状するよりは100万人が破滅する方を望んだ」と。そして、「彼らは行きあたりばったりに戦争にのめり込んで行ったのだ」と。指導者の体面を保つため1000万人を超える犠牲者が出た。

 第二次大戦も同様だ。ヒトラーの野望を見抜けなかったチェンバレン英首相と気付いていながら対決を避けたダラディエ仏首相。この無能で臆病な二人の宥和(ゆうわ)政策がヒトラーの進撃に道を開いた。

 戦後チャーチル元首相は、この戦争は「全く必要のない」、しかも「止めることができた」“無用の戦争”だったと吐き捨てている。

 歴史には、指導者の愚鈍、勘違い、癇癪(かんしゃく)、保身、虚栄などの悪徳によってもたらされた“無用の戦争”が満載されている。

 チャーチルと共に第二次大戦を収束させたドゴールは、指導者にとっての“性…

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田中秀征

元経済企画庁長官

1940年長野県生まれ。東京大学文学部西洋史学科、北海道大学法学部卒業。83年衆議院議員初当選。93年6月に新党さきがけを結成し代表代行に就任。細川護熙政権の首相特別補佐。第1次橋本龍太郎内閣で経済企画庁長官などを歴任。福山大学教授を30年務め、現在、福山大学客員教授、さきがけ新塾塾長。主な著書に「日本リベラルと石橋湛山――いま政治が必要としていること」(講談社)、「判断力と決断力――リーダーの資質を問う」(ダイヤモンド社)、「自民党本流と保守本流」(講談社)、「平成史への証言」(朝日新聞社)。