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SNS情報で国際的事件の謎を暴く「すご腕チーム」<ベリングキャットの衝撃(上) >

八田浩輔・外信部記者
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ベリングキャットを創設したエリオット・ヒギンスさん=英中部レスターで2019年10月7日、八田浩輔撮影
ベリングキャットを創設したエリオット・ヒギンスさん=英中部レスターで2019年10月7日、八田浩輔撮影

 インターネット上の公開情報を分析し、国際的な事件や事故の経緯をいち早く解き明かす独立系の調査グループ「ベリングキャット」が注目を集めている。ポスト真実の時代に市民と共に切り開くインテリジェンス(諜報〈ちょうほう〉)の新時代を3回に分けて紹介する。

 英国のほぼ中央に位置する人口30万人の都市レスター。ベリングキャット代表のエリオット・ヒギンスさん(40)が個人のオフィスとして使う表札もない小部屋には、雑誌が1冊だけ置かれた机とキャビネット、2脚の椅子しかない。「シンプルな部屋ですね」。そう私が口にすると、ヒギンスさんは「物が多い部屋は好きじゃない」と笑い、ノートパソコンを手に取った。「これとインターネットがあれば調査はできます」

 レスターに暮らす元ブロガーのヒギンスさんは、シリア内戦で使用された軍事兵器や航空機事故などの分析記事を多く手がけてきた。軍事部門や防衛産業に勤めた経験はなく、紛争地に足を踏み入れたこともない。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿される写真や動画、地図などネットで誰でもアクセスできる情報を細部まで分析する「オープンソース調査」と呼ばれる手法で、政府機関をも非常に驚かせる結論を導き出してきた。

 諜報分野には公開情報を読み解いて機密に迫るオシント(=オープン・ソース・インテリジェンス)という用語がある。専門家のみならず画像解析にたけた市井の人々が集うプラットフォームであるベリングキャットは、ウェブにあふれる玉石混交の情報から真実とウソを見極める新時代のオシントをジャーナリズムに融合させたパイオニアだ。「真実を探るための『シチズン(市民)・インテリジェンス』」。ヒギンスさんはベリングキャットの取り組みをそのように例える。

 ベリングキャットを一躍有名にしたのは、2014年7月に起きたマレーシア航空17便(MH17)の撃墜事件の調査だった。

 アムステルダム発クアラルンプール行きのMH17は、ウクライナ東部の親露派支配地域の上空を飛行中にミサイルで撃ち落とされ、乗員・乗客298人全員が犠牲になった。事件直後から米国や欧州の同盟国は、ウクライナ東部の親露派武装組織の関与を疑った。ロシアから提供された地対空ミサイル「ブク」で撃墜したとの見方だった。一方、ロシアと親露派はウクライナ軍の空対空ミサイルによるものと主張し、情報戦を展開した。

 2カ月後となる9月初めにベリングキャットは、「ブク」の輸送にロシア軍「第53対空ミサイル旅団」が関与したと示唆する記事を複数の証拠と共にウェブサイトで発表した。ウクライナとロシアでSNSに投稿された画像や軍人の書き込みなどを分析し、事件前にロシアからウクライナに向かった軍事車両の経路をたどった結果だった。

 それから1カ月後、ヒギンスさんに英国の警察から連絡が入った。MH17事件の国際捜査チームが、英政…

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八田浩輔

外信部記者

科学環境部、ブリュッセル特派員を経て20年8月から外信部。欧州時事や気候変動をめぐる政治・社会の動きをウォッチしています。科学ジャーナリスト賞、日本医学ジャーナリスト協会賞を受賞(ともに13年)。共著に「偽りの薬」(新潮文庫)。