韓流パラダイム

南北の上流階級が大恋愛? 異色の韓流ドラマの見所は

堀山明子・ソウル支局長
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髪をまとめないと変人扱いされると、韓国女性(ソン・イェジン)の髪をハンカチで結んであげる北朝鮮将校(ヒョン・ビン)=tvN提供
髪をまとめないと変人扱いされると、韓国女性(ソン・イェジン)の髪をハンカチで結んであげる北朝鮮将校(ヒョン・ビン)=tvN提供

 北朝鮮人民軍の実力者である「総政治局長」の息子と韓国の財閥後継者の女社長が、南北分断の壁を越えて運命的な大恋愛をする――。こんな設定の韓流ドラマが、韓国で大ブレークしている。現実の国際情勢では米朝交渉が行き詰まり、北朝鮮は核・ミサイルを再開発するぞと脅しモードに入っている。なぜ今、「禁断の恋」に盛り上がっているのか。見てみると、今までのドラマにはない、韓国女性たちがハマるツボがあった。

視聴率1位、予告動画の再生200万回超え

 ドラマは、ケーブルテレビ局tvNが2019年12月から放送開始した「愛の不時着」。初回からケーブルや衛星チャンネルの分野で視聴率1位だったが、視聴率調査会社ニールセン・コリアによると、1月18日放送の第9話は11・5%を記録し、地上波を含む同時間帯のテレビ番組でトップに。検索サイトのネイバーにアップされた第10話の予告編は、再生200万回を超えた。

 ストーリーは、韓国財閥の娘で自らアパレル会社を創業したソン・イェジンふんするヒロインが、パラグライダー飛行中に突風にあおられ、軍事境界線を越えて北朝鮮側の非武装地帯に不時着。ヒョン・ビンが演じる北朝鮮エリート将校に助けられ、恋に落ちるという話。

 将校がスイスに留学中に、実は偶然、女社長と会っていたという伏線が運命的な出会いを演出する。恋敵は北朝鮮の大手百貨店の娘で、これまたスイス留学組。社会主義体制の下、人民は不自由で苦労しているという一般的な北朝鮮像とはかなり違う。

 北朝鮮上層部の不正や権力闘争が話の端々に出てくるが、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は登場しない。「最高尊厳」を傷つけて政治問題化させたくないというギリギリの配慮だろう。

書き込みの8割が10~40代の女性

 南北分断を扱った韓流作品の主人公はこれまで、国家を背負って悲壮感を漂わせていた。日本でもヒットした韓流映画の草分けである「シュリ」(1999年)は、韓国情報機関の女性とソウル市民になりすました北朝鮮工作員の悲恋話だった。「共同警備区域JSA」(2000年)は南北兵士の友情を題材にしたが、重苦しい現実を問題提起して終わった。人間関係より、南北の緊張関係を正面から取り上げることに重きがあり、その設定を巡っては保革間の政治論争の火種になった。

 これに対し「愛の不時着」は、南北分断は恋愛物語を盛り上げるための舞台回しにす…

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堀山明子

ソウル支局長

1967年生まれ。91年入社。静岡支局、夕刊編集部、政治部などを経て2004年4月からソウル支局特派員。北朝鮮核問題を巡る6カ国協議などを取材した。11年5月からロサンゼルス特派員。18年4月から現職。