本連載では「認知症基本法案」を中心に、我が国の認知症対策のあるべき方向性について論じています。
3回目となる本稿は、「認知症基本法案」の2本目の柱である「認知症バリアフリー」についてご説明します。
歴史をひもといていくと、実はかつて我が国こそが世界をリードする認知症対策の先進国だったことがわかります。
そして、オレンジリングの活動をいち早く始めた我が国の取り組みに英国がいち早く目を付け、独自の手法で取り入れました。するといつの間にか本家本元の我が国をはるかに追い越し、「認知症フレンドリー」先進国として名をはせていきました。
では、英国では一体何をやっているのでしょうか。
まず、産業界が業界ごとに「認知症フレンドリー宣言」という名のアクションプランを策定・公表しました。
そして英国がすごいのは、宣言するだけではなく、現場の隅々までアクションを落とし込んでいったところです。
例えば銀行であれば、認知症のお客さんらしき人が来て、ATM(現金自動受払機)の操作に困っていれば、寄り添ってサポートしてあげる。また、バスの運転手さんであればお年寄りが乗ってきた時に「どこで降りますか?」と聞いておき、停留所に着いたら「着きましたよ」と教えてあげる。
ところで、読者の皆さんも「親の財布が小銭で太り始めたら認知症を疑え」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
実はこの「財布が太る」という現象、認知症当事者の方々に聞くとれっきとした理由があることがわかります。「レジなどで支払いに時間がかかると列がつかえてしまうので、とりあえず大きいお札で払っている」というのです。
そこで、そういった声を受けて、ゆっくり支払いをしたい人のためのレジ「スローレーン」をつくった英国のスーパーがあります。そうしたら、認知症の方や障害をもった方がこの「スローレーン」を利用し始め、なんとスーパーの売り上げが1…
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鈴木隼人
衆院議員
1977年生まれ。2002年経済産業省入省。金融担当相補佐官、行革担当相補佐官などを経て14年衆院初当選。東京10区、当選2回。自民党竹下派。