Social Good Opinion

「おいしい!」という気持ちから、もっと自分事に

千野彩佳・日本女子大4年
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千野彩佳さん
千野彩佳さん

 もうすぐバレンタインデー。皆さんがチョコレートを買うときに考えていることは何でしょうか?

食から見えてくるもの

「カカオの涙」に思いを…産地の児童労働や貧困?パティシエらが支援援の輪

 私たちは、普段、パッケージに入っている姿のチョコレートを見ています。

 チョコレート=ジャンクフードのイメージからか、どんな人がどんなふうにどんなものからチョコレートを作っているのか考えることは少ないと思います。

 しかし、この記事にもあるように、カカオの生産地では、児童労働や環境破壊などが大きな問題となっています。

 現在でも、96%以上のカカオ農家が小規模経営で、カカオ生産を主な収入源としていますが、市場価格の5%以下しか生産者に渡らないようです。

チョコレート×「○○」

 このような「社会問題」の他にも、例えば「歴史」の側面から見ると、チョコレートは昔は薬で飲み物だった、など時代によってチョコレートの意味づけは変化しています。

 「科学」の側面からは、私は日本の大学で、官能評価という手法で、チョコレートのおいしさを人間が食べて数値化する研究をしています。カカオ含量を変えた試料を食べてもらい、アンケートと組み合わせて結果を考察します。

 チョコレートというキーワードから、いろいろな分野につながっていることが分かります。私は、自分が普段口に入れるものに対して、少しでも知ってみるということは、自分が知らなかった問題を知ることにつながると考えます。そして食を通して、いろいろな分野がつながっていることを実感できることをとても楽しく感じています。

世界の問題に目を向ける

 食へのこのような思いの原点は、高校2年生でのカンボジア研修です。もともと食べることが大好きだった私は、十分に食べることのできない人がいる事実を目の当たりにし衝撃を受けました。何かできることをしたい、と思ったとき、自分の好きな、食でできたら良いと考えるようになりました。

 大学生となり、Table For Two(https://jp.tablefor2.org/)というNPOの学生組織に所属し、学食メニュー開発を行いました。先進国の肥満解消のためのヘルシーメニューを開発し、その1食あたり20円を、途上国の飢餓に苦しむ子どもに寄付するというコンセプトです。

食への考え方、スローフード

 ボランティア活動を行う中で、社会問題に真正面から向き合うことと同じくらい、伝え方の大事さに気付きました。問題を解決しようとただ呼びかけるだけでは限界があります。皆、自分自身が生きていくためには、どんなに良い公正な商品でも、値段の高すぎるものを毎日買う人が少ないのは当然です。どんな考え方で食と向き合えばいいのか?

 そこでわたしがたどり着いたのが、イタリア、食科学大学で食を社会学的に学ぶことです。ここは、地域の伝統食や調理法を守り、ゆったりと食事を味わう「スローフード」の発祥の地です。

規格外野菜を利用した料理を作り、皆で食べ、テーマに沿った方のお話を聞くイベント。私も調理しました=イタリア・ブラで2019年12月6日、Preet Sanghvi撮影
規格外野菜を利用した料理を作り、皆で食べ、テーマに沿った方のお話を聞くイベント。私も調理しました=イタリア・ブラで2019年12月6日、Preet Sanghvi撮影

 スローフードは、おいしく健康的で(GOOD)、環境に負荷を与えず(CLEAN)、生産者が正当に評価される(FAIR)食文化を目指す社会運動です。"食べる"ことは私たちの生命に直接関わり、人間の歴史を築いてきました。そこには、あらゆる地域の伝統・英知・喜びなどが込められています。料理を味わって楽しみつつ、料理の皿の外にある、その見えない味付けを考えるのがスローフードの運動です。

五感を使うことで社会課題を自分事に!

 私は、イタリアでスローフードの若者たちのネットワーク、「Slow Food Condotta UNISG」(https://condotta.wixsite.com/condottaunisg)にて活動しています。前回のイベントでは、廃棄される野菜を使ってみんなで料理を作り、楽しみ、フードロスを減らすための事業をしている方をお招きしお話を伺いました。

 料理をしている間もいろいろな話をし、料理を囲みながら皆が集うという最高の時間を過ごしました。

 この体験から、いろいろな問題をただ啓発して「こうすべきだ」というのではなく、一人一人の「楽しい! おいしい!」という気持ちをその人自身が気付き、自分の五感を使うことで、自分事になると考えました。

 一人一人がそのような気持ちを大事にすることで、もっと自分や相手を大事にできて、多くの世の中の社会問題を解決できると信じています。

 松丸さんも、食から社会を見る、と前回の記事に書いていたように、いろいろなことを知ることで、日々の食べるものが変わるだけでなく、自分自身のいろいろな考え方に影響を及ぼしていくことを強く感じます。

 バレンタインデーを機に、自分の食べ物を考えるところから、自分自身を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

千野彩佳

日本女子大4年

1997年生まれ。食をさまざまなものとつなげ、食を通して一人一人が自分自身を見つめ直すきっかけ作りをするために活動中。官民協働留学奨学金制度「トビタテ!留学JAPAN」に採用され、食に対する考え方、価値観を学ぶため、スローフード発祥のイタリア、食科学大学に留学中。日本女子大学家政学部食物学科食物学専攻4年(今年度休学中)。