
1月26日に投開票された南米ペルーの国会議員選(1院制、定数130)でアルベルト・フジモリ元大統領(81)の長女ケイコ氏(44)が率いる最大野党「人民勢力党」が惨敗した。党首ケイコ氏の汚職疑惑に揺れ、汚職対策に消極的な人民勢力党の姿勢に、有権者が厳しい判断を突きつけた。ケイコ氏が有力候補と見られていた2021年の大統領選や人民勢力党の行く末はどうなるのか。政界に影響力を誇ってきたフジモリ家の動向やペルー政治の展望を探ってみた。
中道右派の人民勢力党は、16年の国会議員選で過半数を超える73議席を確保し、議会の主導権を握った。だが今回は、人民勢力党の得票率は4位で15議席にとどまり、大きく退潮した。10議席が未確定となっている1月31日時点の中間集計だが、惨敗という結果は変わりようがない。別の中道右派政党が最多の25議席を獲得したが、いずれの政党も過半数に届かなかった。人民勢力党など主要政党への批判票が分散して小政党が躍進し、議会の構成勢力が細分化された形だ。
人民勢力党の敗因は、ケイコ氏への汚職捜査が進んでいることに加え、ビスカラ大統領が進める政治改革を妨害していると受け止められたことだ。
18年3月に汚職疑惑でクチンスキ前大統領が辞任したのを受け、副大統領から昇格したビスカラ氏は汚職一掃を図る改革を優先事項に掲げた。だが、人民勢力党は国会でことごとくビスカラ氏の提案に反対。改革は行き詰まり、政治は停滞した。
ビスカラ氏は19年9月、「抵抗勢力」と位置づける人民勢力党の弱体化を狙って国会解散に踏み切った。国会は憲法に反する強引な解散だとして法廷闘争に持ち込んだが、憲法裁判所は20年1月14日、解散は合憲との判決を出した。
国会議員選は5年に1度の大統領選と同時に行われてきたが、今回、初めて単独実施となった。ビスカラ氏は、「ペルーに利益をもたらすコンセンサスを模索し、責任を持ち、成熟した」国会にしたいと述べていた。その思惑通りの結果になったと言える。
16年の選挙でクチンスキ氏が党首を務めた中道右派政党「変革のためのペルー国民」の副大統領候補として当選したビスカラ氏だが、クチンスキ氏辞任後に党は分裂。残った勢力も改革路線への反発を強めたため、ビスカラ氏には与党と呼べる勢力がない。今回の選挙でも特定政党に肩入れすることを避けたビスカラ氏は、改革に前向きとされる中道、左…
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