ウェストエンドから

スコットランド人はなぜ「親欧州」なのか

服部正法・欧州総局長
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かつてスコットランド王の居城でもあったエディンバラ城=2020年1月21日、服部正法撮影
かつてスコットランド王の居城でもあったエディンバラ城=2020年1月21日、服部正法撮影

 英国が1月31日に欧州連合(EU)を離脱した。離脱を決めた国民投票から約3年半、ようやく達成できたブレグジット(英国のEU離脱)だが、これに伴って足もとの国内が揺れている。

 英国という連合王国を形成する「国」の一つ、スコットランドで独立機運が再燃する気配を見せているのだ。スコットランドは人口比でイングランドの10分の1程度の約540万人の「小国」だが、もともと独立志向が強い。2014年に独立の是非を問う住民投票を行い、反対多数となって独立に向けた動きはいったん沈静化した。

 しかし、16年のEU離脱を問う国民投票では約62%がEU残留を支持した。英国内の他の「国」に比べてずぬけた「親欧州」であるスコットランドでは今、「独立したうえでEUに再加盟」という考え方が勢いづきつつある。なぜ独立を望み、どうしてそれほど「親欧州」なのか――。探っていくと、イングランドなど他の英国の「国」とは異なった、スコットランドの持つ欧州大陸との「近接性」が見えてきた。

 「うーん……。その質問に答えるのはとても難しいです。今の段階では答えられないですね」

 スコットランド中部のスターリング。1月下旬、この町の路上やショッピングモールで地元の人何人かに、独立の是非を問う住民投票があった場合、「賛成」「反対」どちらに票を投じるか聞いてみた。

 「もし明日、住民投票ならどうします?」。私の問いに、宙の一点を見つめるようにして考え込んだ男性、ローワン・バートンさんは、言葉を絞り出すようにそう言った。

 7年前に大学を卒業し、今は薬品の臨床研究などを行う会社に勤務するバートンさんは、14年の独立を問う住民投票では、独立に反対の意思表示をし、16年のEU離脱を巡る国民投票ではEU残留に投票した。

 そんなバートンさんが、再び独立を問う住民投票があった場合、「賛成」「反対」いずれに入れるか迷うわけは、「スコットランドは英国とEU、両方の中にあるのが最も望ましい」と考えるからだ。英国がEUを離れるのであれば、英国にそのまま残るか、あるいは独立国家としてEUに再加盟するか。どちらが良いのか迷っているのだ。

 スコットランドの「首都」エディンバラの郊外にある港町マッセルバラ。ここで話したX線撮影を学んでいる女性(35)も「私は自分のことをヨーロピアン(欧州人)だと思っている。だから独立することでEUにとどまれるなら、私は独立を支持したい」と言う。だが、「でも英国が分裂するのはとても悲しいこと」と心が揺れる。

 この2人の迷いは、近い将来に独立を問う住民投票が再度実施された場合、その結果に大きな影響を与えると注目されている「ユニオニスト・リメイナー(英国との統一維持とEU残留を支持する人)」の典型例と言える。

 14年の住民投票では、独立賛成が約45%、反対が約55%で約10ポイントの差があった。その後も最近まで世論調…

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服部正法

欧州総局長

1970年生まれ。99年、毎日新聞入社。奈良支局、大阪社会部、大津支局などを経て、2012年4月~16年3月、ヨハネスブルク支局長、アフリカ特派員として49カ国を担当する。19年4月から現職。著書に「ジハード大陸:テロ最前線のアフリカを行く」(白水社)。