「新型コロナウイルス禍」が問う京都の将来 錦市場を歩いて感じたある変質

松井孝治・元官房副長官
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松井孝治・元官房副長官=東京都千代田区で2019年6月3日午後2時24分、内藤絵美撮影
松井孝治・元官房副長官=東京都千代田区で2019年6月3日午後2時24分、内藤絵美撮影

 コロナウイルスの脅威はすっかり銀座や浅草、そして京都の街の様相を変えてしまった。

 私の周辺では、多くの人々がこの感染症の収束と罹病者(りびょうしゃ)の快癒を願い、また観光のみならず経済への悪影響を懸念しつつも、ひとしきりそうした話題に触れたあとに、5年前の東京や京都に戻った感があり、街が落ち着きを取り戻したことを歓迎する人が少なくないのも印象的な事柄である。

 以下に記すのは、新型コロナウイルスによる肺炎の流行前の歳末の風景である。

 私が京都・洛中の街に明らかな異変を感じたのは2019年初秋のある水曜日の午後のことだった。

 水曜は錦市場の定休日、だったはず。普段は買い物客でごった返すけれど、水曜日はこの狭いアーケードはガラ空きで歩きやすい。出張の際、新京極の「スタンド」で昼食をとって、烏丸錦下がる(烏丸通り錦小路下がる)の銀行に行くのに、久しぶりに錦小路通りを通ろうと思ったのは、まだ暑さの残るその季節に、錦のアーケードなら歩きやすかろうと思ったからだった。が、どうも様子がおかしい。

 寺町錦(寺町通錦小路)の角、水曜のはずなのに外国人がやたら多い。皆さん手に手に串物を持って歩いている。中国語、英語がやたら耳につく。日本語の人もほとんどが標準語。

 あれあれ、錦市場の東の方(新京極寄りの入り口近く)には、そういうお店が増えたのかと思いきや、結局、高倉通まで同じ調子。途中何度か、食べ物を洋服に付けられそうになる。

 中ほどの津之喜酒店に店主の藤井輝男さんがおられて、ごあいさつがてら「一体どうなっているのですか」と声を掛けると、困惑した表情で「いやこのところ困っているんです。商店街会長の宇津克美さん(我が家とは親戚)も『どうにか立ち食いを抑制できないか』とおっしゃってるけれど各商店の判断なんで難しいんですわ」と。

 大阪の黒門市場がインバウンド(訪日外国人)の観光客の立ち食い商店街と化し…

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松井孝治

元官房副長官

1960年生まれ。83年旧通商産業省入省、94年から首相官邸出向。2001年参院選で京都選挙区に民主党から出馬し、初当選。09年鳩山内閣で官房副長官。参院議員を2期務め13年政界引退。慶応大総合政策学部教授。19年、有志とともにシンクタンク・創発プラットフォームを設立。