ラテンアメリカから

「ブラジルのトランプ」がメディア攻撃を激化

山本太一・サンパウロ特派員
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ボルソナロ大統領のメディア攻撃について話すフォーリャのビニシウス・モタ編集長=サンパウロで2020年1月24日、山本太一撮影
ボルソナロ大統領のメディア攻撃について話すフォーリャのビニシウス・モタ編集長=サンパウロで2020年1月24日、山本太一撮影

 南米ブラジルの極右、ボルソナロ大統領が自身に批判的な主要メディアへの攻撃を激化させている。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を多用し、批判的なメディアや報道を「敵」「フェイクニュース」と決めつけ、支持基盤の強化を図る手法だ。「ブラジルのトランプ」と呼ばれるだけあって、トランプ米大統領のメディア対応と酷似している。

 ブラジル全国ジャーナリスト連盟が1月16日に発表した報告書によると、ボルソナロ氏は2019年1月の政権発足から年末までに、メディアやジャーナリストへの攻撃を121回行った。多くはSNSでの発信だ。平均すると3日に1回の計算になるが、これはメディア側から報告された案件だけだ。攻撃内容別ではメディア全般の信頼失墜につながりかねない「メディア不信」の項目が114件を占めた。

 「我々の敵、大手メディアの一部。我々がそれを信じるならみんな終わってしまうだろう」(19年9月、フェイスブック)、「また一つ、メディアのうそだ。報道に関係なく、ブラジルは良い方向に向かっている」(19年10月、ツイッター)といった投稿だ。

メディア不信をあおり支持固め図る

 連盟のマリア・ジョゼ・ブラガ会長によると、ボルソナロ氏はメディアを介さずに発信できるSNSを重視し、政権内の専門グループが投稿前に文言を調整しているという。ブラガ氏は「攻撃を繰り返してメディア不信を根付かせ、メディアは『敵』という思想を定着させる戦略だ」と話す。「敵」を攻撃することで、「味方」である支持者の結束を高める狙いがあるという。

 「メディア不信」以外の7回は、記者の容姿や人格を非難する「口頭での攻撃」などだった。ボルソナロ氏が19年12月に「あなたの顔は同性愛者のようにみえる」と述べたのが代表例だ。長男フラビオ上院議員が主導した疑いがある汚職疑惑で、捜査進展の所感を尋ねた記者への回答だった。ブラガ氏は「大統領という立場にある人間が、公の場所で差別的な言葉を使うべきではない」と当然の主張をする。

 ボルソナロ氏は報告書の発表3日後、フェイスブックに内容を報じた記事を添付して「カカカカカ。ハハハハハ」と書き込んだ。報告書を嘲笑する意図は明らかだ。「記者はきちんとしたジャーナリズム活動をしていない」「メディアは一般人をだましている」などと、支持者とみられる人々から賛同の書き込みが相次いだ。

 ボルソナロ氏は…

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山本太一

サンパウロ特派員

2003年、毎日新聞社入社。千葉支局、東京社会部、福岡報道部を経て17年秋から現職。メキシコ以南の中南米地域を担当。