子どもの命を守るため母乳バンクの普及を

堀内詔子・自民党女性局長代理
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堀内詔子氏=高橋恵子撮影
堀内詔子氏=高橋恵子撮影

 2019年の出生数は、1899年の国の統計開始以降初めて90万人を下回るという。人口がどんどん減っていく中で、国を挙げて子どもの命を守り、育てていく必要がある。

 現在私は、根本匠元厚生労働相が会長を務める「母乳バンク研究会」で幹事長を務め、母乳バンクの普及に取り組んでいる。1月に現状では国内唯一の「母乳バンク」を視察するため、昭和大学江東豊洲病院を訪ねた。

 母乳バンクとは、母乳が出る女性に「ドナーミルク」として母乳を提供していただき、母親から母乳を得られない赤ちゃんに送る仕組みだ。安全性をチェックした上で、体重1500グラム未満で生まれた「極低出生体重児」に与えられている。

母親の子育てへの執念に共感

 母乳バンクの普及に取り組むことになった発端は、2015年に毎日新聞で粉ミルクなどが混ざった質の悪い冷凍母乳がインターネットで高額で販売されているという記事を見たことだ。この問題も、母乳が出ない母心につけ込んだ行為だと感じ、直後の衆院消費者問題特別委員会で取り上げた。それ以来、赤ちゃんのミルクの問題にアンテナを張り続けてきた。

 京都には、産後命を落とした母親が子どもを育てるために幽霊となって飴を与えたという話にちなんだ「幽霊子育飴」が売られているが、母親の子育てに対する執念をよく表している。

まだ足りていない母乳バンク

 新生児集中治療室(NICU)に入院している極低出生体重児の多くは、超早産で発達が十分でない状況で産まれてきている。その小さな赤ちゃんに人工乳などを与えると体に負担がかかり、腸管が壊死(えし)してしまう危険があるという。

 この壊死性腸炎は小さく産まれた赤ちゃんの死因のトップだが、これを防ぐにはドナーミルクが有効だ。母乳は、壊死性腸炎の発症を抑えるオリゴ糖を含み、赤ちゃん自身に免疫力をつけてくれるそうだ。

 極低出生体重児は年間約7000人産まれ、そのうち母親から母乳が得られないケースは約3000人という。しかし、昭和大学にある母乳バンクが対応できるのは年間80人の赤ちゃん。2020年春にピジョン株式会社が場所を提供し、日本で二つ目の母乳バンクがスタートする予定だが、それでも対応できるのは200人だ。スウェーデンでは100%、アメリカも約60%のNICUでドナーミルクが使用できるが、日本は約5%にとどまっている。まだまだ数が足りていないのが現状だ。

まずは正しい理解から

 また、母乳が余ってしまい、搾って捨ててしまうのはもったいないと、母乳の提供を望む女性はたくさんいる。その善意を、母乳を必要としている赤ちゃんにきちんと届けられるような体制を整える必要がある。

 冷凍した母乳は心配という人もいるかもしれないが、日本には古くからもらい乳の風習がある。いわば現代のもらい乳だと思ってもらえばいい。

 母乳を提供する女性には血液検査などを受けてもらい、感染症などの危険性がないかをチェックした上で、ミルクを預かる。62.5度で30分間低温殺菌した上で冷凍され、病原菌などの混入がない状態で赤ちゃんに届けられる。直接ではなく、冷凍という形を取ってはいるが、このような厳格な管理を経て提供されるため、直接母乳をもらうより安全だといえる。

 まずは極低出生体重児にとって、母乳が効果的であるということ、命の綱になるということを広く周知することで母乳バンクを増やし、必要な赤ちゃんにとって母乳が手に入る環境を整えていきたい。

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堀内詔子

自民党女性局長代理

1965年生まれ。「フジヤマミュージアム」館長を経て2012年衆院初当選。厚生労働政務官などを歴任。衆院山梨2区、当選3回。