新型コロナ 防ぐカギは地域医療にあり 「クルーズ船」は検証不可欠

武見敬三・自民党国際保健戦略特別委員長
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武見敬三氏=佐々木順一撮影
武見敬三氏=佐々木順一撮影

 2009年の新型インフルエンザH1N1の際、日本では他国に比較して死亡者数が非常に少なかった。当時、私が各国の専門家から理由を聞かれて調べたところ、地域医療の水準の高さが背景にあることが分かった。日本の医療機関はアクセスが非常に容易なうえに能力が高く、そのことが早い診断と治療を可能にし、重症化を防いだ。

 ただ、今回のコロナウイルスは治療方法が確立していない。高齢者や基礎疾患がある方は重症化し、亡くなる危険性も高い。一刻も早く治療方法を確立し、それを地域医療にまで早期に浸透させることで重症化を防ぎ、命を救うことに最大のエネルギーを注ぎたい。

 現時点では東京都であった屋形船、千葉県などでのスポーツジム、このような感染者の集中的な集団(クラスター)を早期に確認して封じ込めていくことが必要だ。

 国立感染症研究所などには疫学調査の専門家がおり、こうした人材をフル活用して「クラスター退治」をしていかなければならない。

 クルーズ船の対応について批判が出ている。しかし英国船籍であり、船内は接岸していても船長の管理下にある。船長を通じて乗務員に協力してもらわなければならない。

 乗組員はこのような状況についての訓練を受けているわけでもなく、感染症の怖さを十分理解しているわけでもない。さらに機関や食事などのために船内を動き回らなければならない。乗組員同士、あるいは乗組員を通じた感染を阻止する環境としては極めて好ましくなかった。

 次にやらなければならないのは検証だ。実は治療方法がない新型の感染症の拡大が巨大なクルーズ船内で起きたのは今回が初めてだ。世界のためにも日本政府は今回の課題を確認し、よりよい対応策を明らかにする責任がある。

 クルーズ船をめぐっては海外で日本の対応を批判する根拠のない報道が盛んに出ている。日本の医療に対する国際的評価を落とさないためにも検証とその対外的な公表は必要だ。東京オリンピック・パラリンピックを予定通り開催するためにも、日本の取り組みを国際的に発信しなければならない。

 感染症対策で重要なことはいかに初期の兆候を発見して抑え込むかだ。中国・武漢市で発生して2週間ほどが最初の山場だった。そして中国政府も認めているが、初動対応に失敗した。

 発生国が世界保健機関(WHO)に報告してはじめて周辺国が体温検査や問診票などの検疫をはじめられる。それが遅れたことで日本に入って…

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武見敬三

自民党国際保健戦略特別委員長

1951年生まれ。テレビキャスターなどを経て、95年参院初当選。外務政務次官、副厚生労働相、党参院政審会長などを歴任。世界保健機関(WHO)親善大使。参院東京、当選5回。自民党麻生派