
新型コロナウイルスの感染拡大に国民の不安が高まっている。こうした危機が起きた時に国民が求めるのは単に“安全”であるだけでなく“安心”できることだ。不安が高まれば高まるほど、この国民が求める安心のレベルは高まる。現在、トイレットペーパーが店頭からなくなるなど、デマに惑わされたり、飲食料品の買いだめなどが起きたりしているのは、国民の不安が高まっているからこそだ。
本来、政府は国民の不安が高まらないよう、不安があればその不安を少しでも鎮めるような対応を取ることが求められている。ところがこの間の新型コロナウイルスに対する政府の対応は、国民の不安を鎮めるどころか、逆に国民の不安を高めるような対応をしてしまっている。
私は2010年菅内閣の官房副長官時代に新型インフルエンザ等対策特別措置法の立法を事務方に指示し、その立案に携わった。当時、新型インフルエンザの感染は収まっていたが、今後、似たような感染症が発生した時に、政府が迅速かつ適切な対応が取れるように準備したのが特措法だ。
その内容は緊急事態宣言や私権制限を含むものであったので、事務方含め慎重論や反対論もあったが、私はそのような内容だからこそ、有事になってから慌てて拙速に立法するのではなく、平時に冷静な議論を丁寧に重ねて内容を十分に精査した上で成立させることが重要と考えた。だからこそ当時、参議院では野党側が多数を握っていたので、野党の意見にも耳を傾けてその賛同を得るところまで丁寧に議論を尽くし、検討から成立までに1年半あまりの時間をかけて成立させたのである。
特措法を作ったのは、ひとえに今回のような事態の発生を想定し、それに機敏に対応できるようにするためであった。したがって今回の一件は政府にとって想定外の事態ではなく、完全に想定ができた、想定内の事態である。にもかかわらず政府は初動を誤り、せっかくこのような事態のために準備していた…
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