オアシスのとんぼ

韓国の感染拡大、新興教団の「刈り入れ屋」って?

澤田克己・論説委員
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3月2日、ソウル郊外の韓国・京畿道にある教団施設前で記者会見する新天地イエス教会のイ・マンヒ教主=AP
3月2日、ソウル郊外の韓国・京畿道にある教団施設前で記者会見する新天地イエス教会のイ・マンヒ教主=AP

 「いろいろ問題のあることで有名な教団なんだよ」

 2月20日に会った韓国メディアの東京特派員が困惑した表情で話していた。前々日に感染が確認された韓国中部・大邱の新型コロナウイルス患者が新興宗教「新天地イエス教会」の信者で、教団内の感染拡大が問題になり始めていた時だ。

 私は知らなかったのだが、韓国では以前から有名な教団だったそうだ。家族の制止を振り切って入信した娘や息子が帰ってこないという訴えが多いという。イ・マンヒ教主(88)が3月2日に記者会見した映像を見ると、「娘を帰せ!」などという悲痛な叫びが聞こえていた。教団施設の前という屋外での会見だったので、近くに詰めかけた親たちがいたようだ。いったいどんな教団なのか調べてみた。

強引な勧誘で韓国社会に波紋

 まずは感染拡大との関係をおさらいしておきたい。聯合ニュースによると、3月8日午後時点の感染者7134人のうち62・8%にあたる4482人が「新天地」関係者だった。最大の問題は、教団側が秘密主義で当局の調査に非協力的だったことだ。教主は会見で謝罪し、当局への協力を約束したが、その後も何か隠しているのではないかと疑われている。

 設立は1984年。新天地というのは、ヨハネの福音書にある「新しい天と新しい地」から取られた名前だ。創設者であるイ教主を「約束の牧者」だと主張し、教主は「永生(不死)」だと説いている。ハンギョレ新聞によると、既成のキリスト教会、特にプロテスタントからは統一教会と並んで異端視されているが、2000年ごろを境に統一教会より新天地の方が警戒すべき対象とされるようになった。

 警戒される最大の理由は、強引な信者獲得の手法だ。韓国メディアによると、他の教会に信者をしのびこませ、そこで仲良くなった周囲の人たちを引き抜く「刈り入れ屋」と呼ばれるチームが暗躍する。今回の新型コロナ騒動では、新天地の信者であることを隠して他の…

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澤田克己

論説委員

1967年生まれ。埼玉県狭山市出身。91年入社。ソウル支局やジュネーブ支局で勤務した後、論説委員を経て2018年から外信部長。2020年4月から再び論説委員。著書に『「脱日」する韓国』、『韓国「反日」の真相』、『反日韓国という幻想』、『新版 北朝鮮入門』(共著)など。