40代半ば ソウル下宿日記

新型コロナウイルス禍 今こそ日韓は協力せよ

坂口裕彦・外信部副部長
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新型コロナウイルスの感染拡大で、人影もまばらな韓国・仁川空港=2020年3月6日、坂口裕彦撮影
新型コロナウイルスの感染拡大で、人影もまばらな韓国・仁川空港=2020年3月6日、坂口裕彦撮影

 逃げるように去るというのはまさにこのことか。韓国最大の国際空港である仁川空港から関西国際空港へ向かうアシアナ航空116便の出発まではあと10時間。とにかくスーツケースに荷物を放り込んで、下宿先を引き払い、使っていた携帯電話も返却しないといけない。

 韓国・ソウルで昨年10月から続いていた「40代半ばでの海外プチ単身赴任」の終わりは、3月6日朝に突然、やってきた。当初の帰国予定は1週間先。前倒しの理由は、もちろん、世界を揺るがす新型コロナウイルスの感染拡大だ。

 日本政府は5日夜、韓国から日本への入国者全員に9日から「2週間の指定場所での待機」と「国内で公共交通機関を使用しないこと」を求めると決めた。あまりにも唐突な発表だったし、具体的に何がどうなるかも判然としなかった。予定通りに帰国したら、どんなことになるのだろうかと大いに戸惑った。会社の上司は「韓国政府が対抗措置を取ると言っているが、何になるのか予想できない。展開を見通せない以上、なるべく早く帰国した方がいい」。ということで、急転直下、帰国することになったのだった。

 猫の目のように状況が変わる中で、正しい情報を把握し、100%正しく行動するのはとても難しい。何をすれば良いのかがわからないと、怖くなって、さらに混乱しそうになる――。これがどたばたの中で実感したことだ。

 たとえば、5日夜の時点では「指定場所での待機」は「隔離」という言葉で伝わっていた。この言い回しの違いに、下宿を共にする日本人は大いに動揺した。「ホテルで一日中、過ごすというイメージですかね。でも、誰が施設を用意するのでしょう。同じ場所で過ごし、もし誰かが感染したら、クルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号で起きたような集団感染になりますよ。空港から家まで帰るのも、家が遠いから、歩いて帰るなんてできません」。4月に帰国するという30代の会社員女性の言葉をよく覚えて…

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坂口裕彦

外信部副部長

1998年入社。政治部、外信部、ウィーン支局、政治部副部長などを経て、外信部副部長。2019年10月から日韓文化交流基金のフェローシップで訪韓中。著書に「ルポ難民追跡 バルカンルートを行く」(岩波新書)。