東南アジア探訪記

新型コロナウイルスに脅かされるインドネシア

武内彩・ジャカルタ特派員
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乗降客が行き来する横で警察官や兵士が警戒するバス停留所=ジャカルタで2020年3月23日、武内彩撮影
乗降客が行き来する横で警察官や兵士が警戒するバス停留所=ジャカルタで2020年3月23日、武内彩撮影

 新型コロナウイルスの感染者が東南アジアでも急増している。人口が多く、医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な東南アジアの新興国での対策をおろそかにすれば爆発的な感染拡大につながりかねない。欧州などと比較すれば感染者数はまだ少ないが、インドネシアではすでに医療関係者が感染、死亡する事例も出ている。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国で最大となる約2億7000万人の人口を抱えるインドネシア。周辺のシンガポールやマレーシアで2月から感染者が確認され始めた後も「感染者ゼロ」を維持し、記者団から「検査できていないだけではないか」と質問されたテラワン保健相は「祈りのおかげだ」と強弁していた。

 ところが、3月2日にインドネシアで初の感染者が確認されて以降は、どんどん感染者が増えている。25日時点で感染者は790人、死者は58人にのぼる。死者数はASEANで最も多く、感染者に占める死者の比率は約7.3%とかなり高い。検査を受けていない軽症や無症状の感染者が多い可能性はあるが、どちらにしても感染は急速に拡大しているようだ。

 危惧されるのは、感染者数が790人という段階であるにもかかわらず、治療にあたった医師や看護師らに複数の死者が出ていると見られることだ。インドネシア政府は詳細を発表していないが、医師会は少なくとも8人の医師が死亡したと明らかにしている。ジョコ大統領は23日に「亡くなった医師や看護師、医療関係者に哀悼の意を表したい。彼らは患者のために命をささげ、ウイルスと戦うため最前線で働いてくれた」と述べ、遺族への補償金の支払いを約束。現在も治療に当たる医師に毎月1500万ルピア(約10万円)、看護師や助産師に750万ルピア(約5万円)の特別ボーナスを支払うと発表した。

 政治・経済の中心で、人口が密集する首都ジャカルタ特別州は25日現在、感染者463人、死者31人にのぼる。政府は当初、指定病院…

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武内彩

ジャカルタ特派員

1980年生まれ。2005年に毎日新聞に入社、神戸支局を振り出しに大阪社会部の在籍が長かった。東南アジア好きは学生時代のフィリピン留学以来。担当地域はインドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、オーストラリアなど。