新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、韓国でも集会自粛が続く中、4月15日に総選挙が投開票される。南北関係など保革が割れる定番の争点は吹っ飛び、コロナ対策でストレスがたまった国民の批判は、文在寅(ムン・ジェイン)政権と与党「共に民主党」(以下、民主党)に向かっている。与党に逆風の構図だ。
しかし、候補者の顔ぶれをみると、「文大統領を守れ」と叫ぶ親文派が与党内で台頭しそうな勢いだ。コロナ対策に目を奪われているうちに、与党内の主導権争いが始まっていた。水面下で何が起きているのか?
与党発「弾劾危機説」
「与党実力者5人組が密室で政治工作」。大手紙・中央日報は2月28日、与党が比例で議席を増やすための作戦会議をこう報じた。韓国の総選挙(定数300)は、253の小選挙区と比例代表(47議席)の組み合わせ。小選挙区と比例区の重複立候補はなく、比例代表名簿は順位の付けられた拘束名簿式だ。26日にソウル市内の食堂で、李仁栄(イ・イニョン)院内代表(国会対策委員長に相当)ら実力者5人が集い、「大統領弾劾を防ぐためには、やむを得ない」と比例選挙区で「禁じ手」を使う方針を決めたという内容だ。
新興宗教団体「新天地イエス教会」の関連施設で新型コロナの集団感染が広がり、文政権に対する世論の反発が湧き上がっていた時期だ。青瓦台(大統領府)の国民請願というウェブサイトでは、「文大統領の弾劾要求署名」が25日に20万人を突破していた。それが報じられると署名は急増し、27日には100万人を超えた。26日に与党実力者が集まったのは、世論の急変に焦り、対策を打とうとしたのだろう。
その後、出席者が韓国メディアにおおむね報道内容を認めた。それによると、5人は保守系野党の「未来統合党」が第1党を取り、国会議長の座を奪われる事態になれば、弾劾訴追案を出される可能性があるという認識で一致。「やむを得ない」選択…
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