クトゥーゾフの窓から

プーチン体制の行方 捨てた院政移行の構想 見えぬ決断の背景

大前仁・外信部副部長
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憲法改正条項に関する採決に先立ち、下院で賛同スピーチをするプーチン大統領=2020年3月10日、AP
憲法改正条項に関する採決に先立ち、下院で賛同スピーチをするプーチン大統領=2020年3月10日、AP

 ロシアの議会や憲法裁判所は3月、プーチン大統領が2024年の大統領選に出馬できる規定を盛り込んだ憲法改正案を承認した。これによってプーチン氏続投の公算が大きくなっている。プーチン氏は1月の段階では院政へ移行するシグナルを送っていたが、構想を変えた模様だ。専門家の分析を交えながら、決断の背景に迫ってみた。

 プーチン氏は重要な政策や方針を発表する際、議員や国民からの質問や提案に答える体裁を取ることが多い。今回の憲法改正を巡っては、世界初の女性宇宙飛行士となったワレンチナ・テレシコワ下院議員が「提案者の役割」を担った。3月10日の下院本会議、テレシコワ氏は「現大統領の権威こそが我々の社会を安定させる要素である」と指摘。憲法改正前に務めた大統領の任期は、改正される憲法での任期制限に含めないという条項を提案した。

 00年に大統領に就いたプーチン氏は首相に横滑りしていた時期もあったが、通算4期目(00~04年、04~08年、12~18年、18年~)を務めている。08年に改定された任期は「1期6年、連続2期まで」と定められており、プーチン氏は24年の大統領選に出馬できない。一方でテレシコワ氏の提案が憲法改正で盛り込まれれば、プーチン氏は36年まで大統領を続けられる。67歳のプーチン氏が83歳まで大統領にとどまる可能性があり、事実上の終身大統領の地位を手にできる。

 テレシコワ氏の提案から1時間半…

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大前仁

外信部副部長

1969年生まれ。2008~13年、18~20年にモスクワ支局勤務。現在は旧ソ連諸国や米国の情勢、日露関係を担当。