久米彩花さん=平末健人さん撮影
久米彩花さん=平末健人さん撮影

 今月のテーマは「エシカルファッション」。

 ファッションは私たちの生活から切り離すことができない身近なものですが、知らないところで社会問題に加担してしまっているかもしれません。7年前に悲惨な事故を起こした劣悪な労働環境をはじめ、服を生産するために大量の資源を消費する一方で多くの製品が店頭に並ぶ前に廃棄されている事など、アパレル業界は多くの問題に直面しています。

 <「服ロス」に歯止めを 「不良在庫」再販の動きも

 地球環境や生産に関わる全ての人に配慮し、豊かにするエシカルファッションを多くの人に広めるために、ものづくりのあり方についてお話ししたいと思います。

7年前の悲劇

 私が自らの消費を見直すきっかけとなったのは、2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊で起きた建物の崩壊事故でした。

当時4000人以上の労働者がビルの中ですし詰め状態で働いていたというラナ・プラザの跡地(2018年4月筆者撮影)
当時4000人以上の労働者がビルの中ですし詰め状態で働いていたというラナ・プラザの跡地(2018年4月筆者撮影)

 縫製工場が入った8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が、ずさんな安全管理と違法な増築が原因で崩壊し、1134人の従業員の命が奪われました。事故の前日に従業員がビルの異常を訴えましたが経営者は取り合わず、作業を続けなければ賃金を払わないと脅し強制的に作業を続けさせていました。

 バングラデシュの劣悪な労働環境はラナ・プラザに限らず、当時世界的にファストファッションが流行したことを背景に、安い賃金と豊富な労働力が求められたことに原因があります。工場の経営者たちは、コストを抑えて生産量を増やすことに必死でした。

 職をなくせば労働者たちは生活を維持できず、体罰や長時間労働、経営者からの圧力に従うしかありませんでした。

 この衝撃的な事故をきっかけに、激化する価格競争によって生産現場が圧迫されていた搾取の構造が世界中のメディアに取り上げられ明るみに出ました。

現場のリアルを知るために、バングラデシュへ

当時4000人以上の労働者がビルの中ですし詰め状態で働いていたというラナ・プラザの跡地(2018年4月筆者撮影)
当時4000人以上の労働者がビルの中ですし詰め状態で働いていたというラナ・プラザの跡地(2018年4月筆者撮影)

 業界の実態に衝撃を受けた私はその現状を見るため、事故から5年の節目にバングラデシュを訪れました。建物が完全に取り壊されたラナ・プラザの跡地は野原となり、死者を追悼するために集まる人々で埋め尽くされていました。行方不明のまま見つからない家族を捜し続けている人や涙を流す遺族の姿、賃金の引き上げを求める大勢の人々の姿が今でも目に焼き付いています。

変わったこと、変わらないこと

 大手アパレルブランドのバングラデシュ工場を訪問し、マネジャーに話を伺うと、「事故のあと、安全な環境である認証を取るために工場を建て直した」と話していました。

 事故のあと、環境改善のため「バングラデシュ労働者安全連合」が結成され、欧米のアパレルブランド各社、小売企業など29社が加盟。加盟企業は、連合の審査を通過した安全な労働条件を維持できる認証工場でのみ生産することができます。

 「ブランドから信用されるためには認証を持っていることが大切」と語るマネジャーの言葉から、大手アパレルブランドが工場に対して労働者の安全を求める意思を示すことが現地に大きな影響を与えると感じました。

 一方、牛皮を革に加工する別の工場では、目を疑うような光景がありました。

化学薬品につけられて皮が変色している=2018年4月筆者撮影
化学薬品につけられて皮が変色している=2018年4月筆者撮影

 Tシャツに半ズボンの軽装、素手で化学薬品に皮を漬ける作業をする男性たちの姿です。化学物質による人体への影響を知らずに作業を続ける彼らの手は、数年でマヒを起こし動かなくなってしまうと言われています。さらに排水は公害を起こし、近隣の住民は皮膚病や発達障害に悩まされています。

情報化社会に生きる私たちができること

 作り手の生活を苦しめることなくファッションを楽しむために、私たちには何ができるでしょうか。

 毎年世界各国ではアパレル業界の改善を求める国際キャンペーン「Fashion Revolution Week」が4月に開催されています。

 メインキャンペーンとして、Instagramで広がっている「#whomademyclothes」は、私たちと企業や生産者をつなげてくれる画期的な活動です。

 キャンペーンのハッシュタグとブランドのアカウントをタグ付けして投稿すると、ブランドは#imadeyourclothesのタグと共に労働環境を公表してくれます。

バングラデシュの工場にて、設備や労働条件についてインタビュー(2018年4月筆者撮影)
バングラデシュの工場にて、設備や労働条件についてインタビュー(2018年4月筆者撮影)

 私が留学したドイツでは、若者を中心にエシカルな商品を求める声が増えていて、もはやエシカルであることが当たり前とされるような文化が広がっています。

 日本ではいまだに、数カ月前に新商品として大量生産された衣類がアウトレット価格で投げ売りされている光景を目にします。

 私たち消費者がどのような商品に価値を見いだし選択するかがブランドを動かし、生産者の生活向上につながります。

Fashion Revolution Weekの運営団体が提供するキャンペーンロゴ。
Fashion Revolution Weekの運営団体が提供するキャンペーンロゴ。

 今こそあなたの「当たり前」を見直してみませんか。

久米彩花

Wake Up Japan創設/グランディッシュ合同会社 執行社員

1997年生まれ。衣食住を切り口に、エシカルな消費を広め、途上国の搾取労働をなくすというビジョンを持って活動中。 高校2年から国際協力に取り組み、途上国の綿花農家や工場を訪問し、生産者が抱える問題を調査。2018年より、イギリス、ドイツ、タンザニアの現地企業にて、ベルリンファッションウイークや生地の展示会などで営業を経験し、エシカルファッションの最前線の現場で経営、マーケティング戦略を学ぶ。 19年10月よりフードロスを活用し料理を提供するTrash Kitchenを大分県別府市にオープン。モデルや講演など幅広く活動している。立命館アジア太平洋大学国際経営学部4年。