Social Good Opinion

エシカルファッションはつながりを纏うということ

大塚桃奈・株式会社BIG EYE COMPANY Chief Environmental Officer(CEO)
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大塚桃奈さん=2020年4月、池添亜希さん撮影
大塚桃奈さん=2020年4月、池添亜希さん撮影

 日々身に纏(まと)い、ときめきを与えてくれるファッションだからこそ、できるだけ誰も/何も傷つけずに服を着て楽しみたいと思う。「エシカルファッション」とは、服を取り巻くものごとと自分自身がつながり、服を大切にすることだと私は考える。

 ネガティブな問題をポジティブに変えていく力があるのも、毎日を彩るファッションである。衣服を買うことを「消費」するというが、服を着て楽しむことは消えてなくなることではない。ファッションに絡む社会問題も、服を選ぶときのように「ときめき」を持ってひもといていく力が私たちにも求められているのではないだろうか。

留学を通して生まれた服へのまなざし

 幼い頃からファッションデザイナーに憧れ、高校3年生時には官民協働留学奨学金制度である「トビタテ!留学JAPAN」の高校生コース1期生として、ロンドン芸術大学のプログラムに参加した。当時は世界へ羽ばたくデザイナーになる!という夢を持ってデザインを学びに行ったが、この留学での一番の気づきはデザインの手法を学ぶことではなく、服を通じて自分自身が社会とつながり、一消費者としてファッションを取り巻くさまざまな問題を「自分ごと」として考えるようになったことだった。

ロンドン芸術大学夏プログラム最後の日に撮った一枚=2015年8月、筆者撮影
ロンドン芸術大学夏プログラム最後の日に撮った一枚=2015年8月、筆者撮影

 前回の記事で久米さんが、ファストファッションが途上国にもたらす社会問題を指摘していたが、私も「エシカル」や「サステナブル」に対する好奇心を持った大きなきっかけは、当時クローゼットの半分以上を占めていたファストファッションの裏側を知ったことだった。

 留学から帰国した当初は海外の繊維工場における労働問題や環境問題の現状を踏まえ、エシカル協会が当時主催していた「フェアトレードコンシェルジュ講座」に通い、地元の畑にて無農薬でコットンを育ててみるなど、服が作られる過程のなかで、どこで誰が作っているのかを重要視するようになった。

日本の服づくりのいま

 さらに、大学1年生の終わりに日本のアパレルブランドでアルバイトをするようになると、国内の繊維産業に目を向けるようになった。私が働いていたブランドでは、日本製のオリジナルテキスタイルから服作りを行い、100年続くブランドを目指していた。セールを一切行わず、作り手や服そのものに対して長く続く関係性を築くスタンスが、服に対する愛着を育むことになると学んだ。

 今日の服作りは国内のみでは成り立たたず、多くのアパレルブランドが労働賃金の安い海外の繊維工場へシフトする中で、日本の繊維産業は衰退している。目に見えないコロナウイルスは繊維産業に新たに打撃を与えているという。

 <新型コロナ拡大 県内経済に打撃 繊維業など 中国との流通停滞 /福井

 ファストファッションの誕生後、安価な輸入服が国内に流通したこと、また日本の少子高齢化もあいまって国内工場の担い手が不足したことにより、日本の服作りの状況は深刻だ。

日本の服づくりに触れるため、岐阜の繊維工場へ=2018年8月、筆者撮影
日本の服づくりに触れるため、岐阜の繊維工場へ=2018年8月、筆者撮影

 グローバルに発展したファッションビジネスが途上国をはじめとする世界だけでなく、国内の問題にも関係し、日々身に纏う衣服が、どこで、誰に、どんなふうに、作られているのか気にしなくても服を楽しめるようになった。つまり、あらゆる面でつながりが断たれているのが、今の服を取り巻く現状ではないだろうか。

見えない関係を服で見る

 大学3年生の夏からはスウェーデン交換留学プログラムに参加し、サーキュラーエコノミーを意識した欧州のファッションデザインに触れる機会を多く得た。ファッションのダボス会議とも呼ばれている「Copenhagen Fashion Summit 2019」への学生ボランティアとしての参加や、ストックホルムにあるアップサイクルのファッションブランド「REMAKE」、アムステルダムにある世界初のサステナブルファッションミュージアム「Fashion For Good」などへの訪問を通して、資源を無駄にしないアイデアやテクノロジーが集結するのを目の当たりにした。また、余白が多い北欧の暮らしに触れる中で、新たに服を生み出し続けること自体への疑問を感じるようになったのも事実である。

「Copenhagen Fashion Summit」は、2009 年のCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)を きっかけに、ファッションビジネスにおける持続可能性を話し合う場として発展。2日間にわたり78人のパネリスト、世界48か国から1300人以上もの参加者が集う=2019年5月、筆者撮影
「Copenhagen Fashion Summit」は、2009 年のCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)を きっかけに、ファッションビジネスにおける持続可能性を話し合う場として発展。2日間にわたり78人のパネリスト、世界48か国から1300人以上もの参加者が集う=2019年5月、筆者撮影

 特に、「アップサイクル」や「サーキュラーエコノミー」との出会いは、あたらしく資源を使って服を生み出し続けることや、新たに服を買い続けること、不必要になれば服を簡単に捨てることが当たり前になった世の中で、見えなくなった「つながり」を浮かび上がらせるものだと思った。

服作りが続くこと、一着の服が続くこと

 最初のロンドン留学から5年、私なりにファッションに向き合う中で見つけたエシカルファッションを育む要素は実はシンプルで、服作りが続く環境を整えること、一着の服を長く楽しみ続ける工夫をすることだと学んだ。服作りが続いていくためには、労働環境や、生産過程の中で自然環境に与える負荷を最小限にする必要がある。一方で、素材にこだわり、また廃棄によるインパクトに配慮した服は、長く着て楽しむことを可能にする。

 ファスト化された現代の社会において、あらゆる「つながり」が見えにくくなっていることが根本的に問題なのではないだろうか。私は、服と自分自身、社会、地域、環境そして生活そのものの間に見えなくなっている関係を取り戻すことが、エシカルファッションへの一歩だと思う。

大塚桃奈

株式会社BIG EYE COMPANY Chief Environmental Officer(CEO)

1997年生まれ。「トビタテ!留学JAPAN」高校生コース1期生・大学生コース8期生。留学を通して生活と向き合い、身の周りに潜むたいせつなモノとは何か見つめなおすようになる。2020年国際基督教大学卒業後、徳島県・上勝町に移住し、新たにオープンする「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」で働きはじめる。同施設は、町民が45分別を行う「ゴミステーション」、体験宿泊ができる「HOTEL WHY」、企業や研究機関が利用できるラボや、コミュニティーホールが併設されている。