新型コロナウイルスが影を落とす北朝鮮の対米戦略

坂井隆・北朝鮮問題研究家
  • 文字
  • 印刷
朝鮮人民軍前線長距離砲兵区分隊の砲撃訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長=2020年3月9日(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
朝鮮人民軍前線長距離砲兵区分隊の砲撃訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長=2020年3月9日(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 米朝関係の足踏み状態が続いている。

 北朝鮮は3月に入って短距離ミサイルの発射を繰り返す一方、同22日には金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹・金与正氏が談話を発表、新型コロナウイルス対策への支援の意向などを盛り込んだトランプ大統領の金委員長あて親書送付に「謝意」を表しつつ、それが直ちに米朝対話再開に結びつくものではないと主張した。

 続けて30日には「外務省新任対米協商局長」名義の談話を通じてポンペイオ国務長官の対北朝鮮制裁強化発言を非難した。

 その後、米国側からも交渉再開に前向きの動きは示されず、むしろ財務省が金融制裁強化のための規定整備を進めたことなどが報じられている。

 こうした中、今後の北朝鮮の出方について、想定しうるいくつかのシナリオに基づき展望を試みたい。

交渉中断シナリオ:核戦力は強化できるが長期的発展の展望得られず

 北朝鮮が核実験や長距離ミサイル発射を再開するなどして米朝交渉の枠組みを破綻させ、交渉開始前の状況に立ち戻るシナリオだ。

 その結果、北朝鮮は、その間停止していた核・長距離ミサイル開発を再開できる。また、対外関係の緊張激化を国内における引き締め、団結強化の名目として利用することもできるだろう。

 一方、そのような行為に対しては国連安全保障理事会による制裁がさらに強化される公算が大きい。またトランプ米政権の強い反発を招いて軍事攻撃などを受けるおそれも排…

この記事は有料記事です。

残り1320文字(全文1918文字)

坂井隆

北朝鮮問題研究家

1951年生まれ。78年公安調査庁入庁、北朝鮮関係の情報分析などに従事、本庁調査第二部長を最後に2012年退官。その後も朝鮮人民軍内部資料の分析など北朝鮮研究を継続。共編著書に「独裁国家・北朝鮮の実像」(2017年、朝日新聞出版)、「資料 北朝鮮研究Ⅰ 政治・思想」(1998年、慶応義塾大学出版会)など