経済至上主義は経済を滅ぼす!

田中秀征・元経済企画庁長官
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田中秀征氏=宮武祐希撮影
田中秀征氏=宮武祐希撮影

 新型コロナウイルスなるものが、人類の生存を脅かすようになって以来、どうしてこんなことになってしまったのかと、私は頭を抱え込んでいる。

 これで近代史がご破算になる。もう一度、新しい出発点に立ってやり直しになる。それは災いを転じて福となす機会にもなると思っている。

 学生時代、私は下宿の部屋の壁に、学校の教室にある大きな年表を貼っていた。それを眺めながら、「人類は今後500年も生存を続けることができないのではないか」と不安に思っていた。破局による滅亡を避けるなら、今のうちに近代文明を丸ごと捨て去って、もう一度旧石器時代から始める他はないとも思ったりしていた。

 歴史を断絶させる不安要因の中で特に大きなものが二つあった。

 一つは原子力利用。いまだ核拡散防止条約(NPT)体制は整わず、米ソに続いて英仏中が核保有国になった頃だ。厳しい米ソ冷戦下では核戦争も現実的脅威であった。そして、軍事利用だけでなく“平和利用”の名の下に、日本を含めた先進各国が原子力発電に大きく踏み込み始めていた。

 もう一つの不安は、かつて幾つもの巨大文明を滅亡させたとも言われるコレラ、ペストなどの伝染病のパンデミックだ。

 今後、年表の編年を続けられるかは、この二つを人類が完全なコントロール下に置くことができるかどうかにかかっていると思った。

 2011年の東京電力福島第1原発事故は、われわれが原発をコントロールできないことを改めて示した。その後はむしろ原子力に対して傲慢になり、居直った感じさえする。事故以前より戦々恐々とした薄氷を踏む慎重さは失われた感じである。

 そこに新たに追加されているのが地球温暖化現象という重大問題だ。これに対しても日本は特別及び腰になっている印象を受ける。

 原発問題、温暖化問題に立ちはだかるのは共に「経済性」の論理だ。経済を停滞させる、競争力を弱めるという現実的な反論によって問題を先送りし…

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田中秀征

元経済企画庁長官

1940年長野県生まれ。東京大学文学部西洋史学科、北海道大学法学部卒業。83年衆議院議員初当選。93年6月に新党さきがけを結成し代表代行に就任。細川護熙政権の首相特別補佐。第1次橋本龍太郎内閣で経済企画庁長官などを歴任。福山大学教授を30年務め、現在、福山大学客員教授、さきがけ新塾塾長。主な著書に「日本リベラルと石橋湛山――いま政治が必要としていること」(講談社)、「判断力と決断力――リーダーの資質を問う」(ダイヤモンド社)、「自民党本流と保守本流」(講談社)、「平成史への証言」(朝日新聞社)。