
世論調査の新会社 サイレントマジョリティーの意見を聞く
「何のために世論調査をするのかと言えば、サイレントマジョリティーを捕捉するということに尽きる。自分から声を上げない方たちの意見をどう把握するか、だ」
毎日新聞社が埼玉大学の松本正生教授、電話調査会社「グリーン・シップ」と共同で4月に設立した株式会社「社会調査研究センター」。社長に就いた松本教授が3月30日の設立記者会見で語った言葉だ。
誰もがSNSで意見を発信しているわけではない。物言わぬ民の多数意見(サイレントマジョリティー)はどこにあるのか。毎日新聞世論調査室長として新会社の業務に携わることになった私にとっても、声なき声に耳をすます日々が始まった。
新会社が最初の世論調査を実施したのは4月8日。新型コロナウイルス感染の緊急事態宣言が発令された翌日に2000件以上のサンプルを集める意欲的な調査だった。調査手法も斬新で、固定電話の自動音声応答(オートコール)と携帯電話のショートメールを組み合わせ、それぞれ1000件超を3時間で集めて分析し、毎日新聞とJNN(TBS系列のニュースネットワーク)が結果を報道した。
集計データを見て驚いたのは、固定電話と携帯電話の回答傾向に大きな違いが見られなかったことだ。
松本教授とグリーン・シップが2年前から実験的に続けているショートメール調査では、内閣支持率が高めに出る傾向が確認されている。携帯ショートメールの調査に回答する層は、スマートフォンを使いこなす人が多い50代以下の割合が、高齢者の割合が比較的高い従来の電話調査より多くなる。安倍内閣には、高齢者層より50代以下の方が支持率が高くなる傾向があると推量されてきた。
しかし、今回の調査では固定電話と携帯電話の内閣支持率がほぼ同じだった。固定と携帯の回答を合算した全体の内閣支持率は44%、不支持率は42%。合算前の数値も支持率が固定44%・携帯44%、不支持率が固定41%・携帯42%となっている。
そこからうかがわれるのは、安倍政権の新型コロナ対応に対する不満が幅広い世代にくすぶっているのではないかということだ。
幅広い年代を偏りなく 「若年層は安倍支持」の傾向崩れる
今回の調査の特徴は、固定と携帯を組み合わせることで世代の偏りがないデータが得られることだ。回答者の年代比率は以下の通りだった。
<回答者の年代比率>
18~29歳10%▽30代14%▽40代18%▽50代15%▽60代18%▽70代19%▽80歳以上7%
若い世代の内閣支持率が高くなる傾向にあるなら、固定電話だけで調査するより全体の支持率が高くなることが予想される。ところが、ふたを開けてみると以下の通り、内閣支持率における年代差がほとんどなかったのである。
<年代別の内閣支持率>
18~29歳46%▽30代42%▽40代44%▽50代42%▽60代…
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