ウェストエンドから

感染症との戦いが浮き彫りにする「非人間的」な状況

服部正法・欧州総局長
  • 文字
  • 印刷
外出禁止措置が発動され、ロンドン中心部でも有数の目抜き通り、オックスフォード・ストリートは店も閉まり閑散としている=2020年4月14日、服部正法撮影
外出禁止措置が発動され、ロンドン中心部でも有数の目抜き通り、オックスフォード・ストリートは店も閉まり閑散としている=2020年4月14日、服部正法撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。世界の感染者数は200万人、死者数は13万人をそれぞれ超えた。世界の様相はわずかこの3カ月で激変し、人類は第二次大戦以降、「最大の試練」(グテレス国連事務総長)に直面している。

 パンデミック(世界的な感染爆発)の中心の一つとなったロンドンで、連日報じられる状況の悪化を見ていると、かつてアフリカでエボラ出血熱感染の実態を取材した際に感じた、感染症そのものがもたらす、あるいは感染症との闘いによって生み出される「非人間的」な状況を思い出す。エボラ感染の取材を振り返りながら、今回の新型コロナ感染でも見えてくる、感染症が我々に突きつける「非人間性」について考えてみたい。

エボラ出血熱取材で見た、生き残った人たちの深い「傷」

 本来なら最初に、新型コロナの取材のことに触れたいのだが、感染が爆発的に拡大する中、残念ながら現段階では現場に近づくのは困難だ。なので、感染の終息直後に現場で取材したエボラ出血熱の例から紹介したい。

 主に2014~16年にかけて、西アフリカのギニア、シエラレオネ、リベリアの3カ国を中心にエボラ出血熱の感染が広がった。エボラウイルスによって引き起こされるエボラ出血熱は当時、感染した場合の致死率が50~90%と極めて高く、発症者は口や鼻、消化器などから激しく出血して死に至る。最近でこそワクチンや治療薬の開発が進み、予防や治療の可能性が広がったが、当時は対症療法しかなくまさに「恐怖の伝染病」だった。

 エボラ出血熱はそれまでアフリカ中部・コンゴ民主共和国の熱帯雨林地帯などアフリカの辺境地で発生することが多かったため、一部の地方での限定的な流行にとどまるケースが大半だった。しかし、13年12月にギニアで最初の患者が出ると、国境を越えて感染はシエラレオネとリベリアにも拡大、しかもこの3カ国の首都など、それまでにはない大都市部での流行…

この記事は有料記事です。

残り7700文字(全文8498文字)

服部正法

欧州総局長

1970年生まれ。99年、毎日新聞入社。奈良支局、大阪社会部、大津支局などを経て、2012年4月~16年3月、ヨハネスブルク支局長、アフリカ特派員として49カ国を担当する。19年4月から現職。著書に「ジハード大陸:テロ最前線のアフリカを行く」(白水社)。