中東・砂の迷宮から

海外からの帰国者は日本の水際対策で何を体験するのか

真野森作・カイロ特派員
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ナイル河畔でくつろぐ人々=カイロ中心部で2020年4月15日、真野森作撮影
ナイル河畔でくつろぐ人々=カイロ中心部で2020年4月15日、真野森作撮影

 鼻の穴の奥へ、もっと奥へ。するする長い綿棒が差し込まれていく。「口で呼吸すると気が紛れますよ」と検査担当者の落ち着いた声。綿棒は、くしゃみを誘うポイントよりもさらに先へと進んでいく。鼻の穴ってこんなに深いのか。「うっ」。少し気持ち悪く感じた次の瞬間、綿棒が引き抜かれる。終わった。ものの1分足らず。粘液などが採取され、ウイルスの有無が分かるはずだ。

 これが新型コロナウイルスのPCR検査の検体採取である。インフルエンザと同様の手法という。ただ、検査担当者は透明樹脂の顔面カバー、医療用マスク、ゴム手袋、不織布の防護服に靴カバーと完全防備姿だ。ワクチンのあるインフルとの違いは明白だった。

 日本の水際対策として羽田、成田、関西といった主要国際空港で、欧米、中東など多くの国からの帰国者を対象に実施されている。私の場合は駐在先のエジプトから一時帰国した4月17日午後、羽田で検査を受けた。結果はすぐには出ない。「それまでどこで過ごせば良いのか?」「結果は陰性か陽性か?」。いくつもの疑問符が長距離移動でぼんやりとした頭に浮かぶ――。新型コロナ危機が続くいま、海外から日本へ帰国するとどんな手続きがあるのか。体験を報告する。

カイロ赴任直後の情勢急変

 私がカイロへ赴任したのは、世界保健機構(WHO)が「パンデミック(世界的な大流行)」を宣言した3月11日の4日後のことだった。エジプトへの空路が止まる…

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真野森作

カイロ特派員

1979年生まれ。2001年入社。北海道報道部、東京社会部などを経て、13~17年にモスクワ特派員。ウクライナ危機を現場取材した。20年4月からカイロ特派員として中東・北アフリカ諸国を担当。著書に「ルポ プーチンの戦争」(筑摩選書)がある。