Social Good Opinion

「世界一、愛が詰まったお洋服」を通して私が伝えたいこと

村上采・Ay「世界一、愛が詰まったお洋服」代表
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村上采さん=三光みゆきさん撮影
村上采さん=三光みゆきさん撮影

 一つのお洋服ができるまでには、国を超えて多くの人々が関わっています。繊維素材の開発者から、テキスタイルデザイナー、ファッションデザイナー、パタンナー、縫製師、販売員、その他お洋服が完成するまでに関わる全ての人に感謝を申し上げ、これからも私たちの生活を彩るお洋服を大切にしていきたいです。

 今日は、アフリカでの経験に基づき、お洋服を通して実現したいことをつづらせていただきます。

アフリカ コンゴ民主共和国から学ぶ、「生きる力」

コンゴ民主共和国で=筆者撮影
コンゴ民主共和国で=筆者撮影

 アフリカの中央に位置するコンゴ民主共和国は、アフリカ大陸で第2位の面積を誇り天然資源に恵まれています。その一方で紛争が続いているため「最も裕福で最も貧しい国」と言われています。

 実際に私がコンゴ民主共和国で体験したのは、明るくパッションあふれる人々との生活でした。政治は不安定で、社会制度もインフラも整っているとは言えませんが、国民の活気から人間としての「生きる力」を学びました。コンゴ民主共和国では、日本のように大学在学中に就職活動をして就職先を決定するような制度はなく、教育を受けても仕事につけるとは限りません。国内でトップレベルの大学を卒業しても就職先がなく、(もちろん代々親族で続く職や専門職につける人もいますが)その日その日を生きるための現金を得るだけで精いっぱいの生活を送る人が多いのです。

 そんな中で、私が出会ったのはファッションビジネスをスタートさせた20代のやる気あふれるチームでした。彼ら彼女らが大学を出ても職につけなかった経験を経て、「自ら職を生み出したい、そしてより多くの若者が職につけるような制度を築きたい」という思いを伝えてくれました。他にも現地NGOとも関わりがありました。それまで、ファッションを仕事にしようとは思っていなかった私ですが、「やってみよう」と心を動かされ、アパレルブランド「Ay」を立ち上げました。

コンゴ民主共和国の縫製師=太田遥月さん撮影
コンゴ民主共和国の縫製師=太田遥月さん撮影

ともに考え、愛を広げたい

 ”Let’s think together how to fish, and make our world filled with love / 魚の釣り方を共に考え、愛があふれる社会へ ”というAyのビジョンには、コンゴ民主共和国から学んだことが凝縮されています。資金や物資的援助、一方的に仕事を「与える」のではなく、「魚の釣り方=how」どうすればより良い生活を送れるのか一緒に考えようと思いました。

Ayの服=射落美生乃さん撮影。モデルは鎌田悠菜さん、露木志奈さん、廣瀬あかねさん
Ayの服=射落美生乃さん撮影。モデルは鎌田悠菜さん、露木志奈さん、廣瀬あかねさん

 また、Ay を立ち上げる中で、生産者と消費者の関係性を変えたいという思いが大きかったです。お洋服は人が心を躍らせたり日々を明るくしたりするアイテムだと信じてやみません。お洋服をどんな人が作っていて、どこで作られているのか、何が使われていて、ブランドは何を目指しているのか、このお洋服を着たらどんな世界が見られるのか……。これからも、愛を届けるお洋服を生み出したいです。

文化を体験できるお洋服を

 その国を理解する上で大切だったのが「文化」です。現地の人の思いと向き合い、その土地の伝統生地や柄、技術を取り入れたお洋服をお届けすることで、「文化を体験」してもらいたい。文化とは、その土地の背景や哲学、習慣、思考のことです。すてきなお洋服を着て、さらに文化を体験できる、そんな夢のあるお洋服たちです。

 これからは、日本古来の文化を取り入れてブランド活動を行っていこうと思っています。私の出身地である群馬県伊勢崎市には、銘仙という着物がありますが、高齢化により技術が継承されず生産が不可能になっています。次世代に残したいという思いで復興プロジェクトを行ったり、ファッションショーを主催したりしている方々がいらっしゃいます。私たちが触れてきた文化は当たり前ではないことを知りました。「着物」は日本が誇る文化であり、銘仙独自の特徴もあります。その背景や精神性をどのようなかたちでも引き継いでいけたらと思っています。

 <伊勢崎銘仙、ロンドンへ 技法復活の有志ら 「展示、夢のよう」 /群馬

2019年3月にコンゴ民主共和国で開いた銘仙のワークショップ。銘仙を紹介し、着付けをした=太田遥月さん撮影
2019年3月にコンゴ民主共和国で開いた銘仙のワークショップ。銘仙を紹介し、着付けをした=太田遥月さん撮影

 最も古い歴史を持つ産業の一つである繊維・アパレル産業。音楽やファッション、芸術などの文化が軽視される流れがある今、文化から私たちは生まれ、救われ、文化の中で生きているような感覚を味わいます。文化は科学的な力は持ちませんが、だからこそ、人はなぜ生きるのかを考えさせてくれるのではないでしょうか。

 そんなことを思いながら、今日もこの世界を彩るお洋服をお届けします。

村上采

Ay「世界一、愛が詰まったお洋服」代表

1998年群馬県伊勢崎市生まれ、慶応大学総合政策学部4年生。教育・コミュニケーション学を専攻。2019年春にアフリカのコンゴ民主共和国へ渡航しお互いが成長できる形を模索。ボランティアではなく持続可能なビジネスを回そうと決意し、 アパレルブランドAyインスタグラム)を立ち上げる。お洋服を通して、「魚の釣り方を共に考え、愛が溢(あふ)れる社会」を目指す。