
「国際人道法違反を裁けない日本の法体系を考える集い」が3日、国会内で開催された。なかなかぴんとこないテーマだが、要は自衛隊が海外派遣される際に必要な国内法整備がされていないという問題であり、突き詰めれば「自衛隊は軍隊か」という憲法9条をめぐる問題に行きつく。1990年代以降、自衛隊の海外派遣は繰り返されてきたものの、「派遣ありき」の政治決定の陰でこの重大な課題は放置され続けてきた。主催者は衆院法制局とも相談しながら練り上げた法律案を提示し、「できる部分から早急に法整備すべきだ」と訴えた。
主催したのは「国際刑事法典の制定を国会に求める会」(代表=伊勢崎賢治・東京外大教授)。日本の現行法の問題点として、PKO(国連平和維持活動)に派遣された自衛隊部隊などを念頭におきながら、以下の三つの点を例示した。
【A=本質論】そもそもジェノサイド(集団虐殺)などの国際社会にとって脅威となる違反行為に対応する国内法が未整備。
【B=「軍事上の犯罪」の特殊性】命令に従って射撃し、誤って一般住民を撃ってしまったケースなど。日本には軍事行為に対応した法律・裁判所がないので、射撃した隊員が罪に問われ、命じた指揮官の責任があいまい。
【C=海外の過失犯罪を裁けない「法の空白」】地位協定によって派遣先国の刑事裁判権は免除されているが、日本の刑法では過失による国外犯処罰規定がないので、たとえば車両の運転中に誤…
この記事は有料記事です。
残り3098文字(全文3698文字)
滝野隆浩
社会部専門編集委員
1983年入社。甲府支局、社会部、サンデー毎日編集部、夕刊編集部副部長、前橋支局長などを経て、社会部専門編集委員。現在、コラム「掃苔記」を連載中。人生最終盤の緩和医療・ケア、ホスピスから死後の葬儀、墓問題までを「死周期」として取材している。さらに家族問題のほか、防衛大学校卒の記者として自衛隊をテーマにした著書も多数。著書に「宮崎勤精神鑑定書」「自衛隊指揮官」「沈黙の自衛隊」「自衛隊のリアル」「これからの葬儀の話をしよう」などがある。