Social Good Opinion

ファッションラバーはファッションラバーにしか耳を傾けない

北山里菜・Sunday Morning Factory Web magazine Set Me Free プロデューサー
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北山里菜さん=Joji Idakaさん撮影
北山里菜さん=Joji Idakaさん撮影

 たくさんの服をゴミにしていた。

 “好みの系統が変わったから”なんて理由でまだまだ着られる服をゴミにしていた。

 私がゴミにしていた服たちのほとんどは、暗い工場の中で一日中過酷な労働を強いられながら、作られていたかもしれない。

 私がゴミにしていた服たちのほとんどは、“古着”という名目で東南アジアや中国のゴミの山の一部となっているかもしれない。

 とても信じ難いが、そんなことが世界のいたるところで起き続けている。

バングラデシュの深刻化したゴミの山=Mumtahina Rahmanさん撮影
バングラデシュの深刻化したゴミの山=Mumtahina Rahmanさん撮影

 現在私は、バングラデシュにアパレル自社工場を持ち、貧困地域に安定した雇用を生み出すことで、子どもたちが働かなくてもよい環境づくりに取り組む、ボーダレス・ジャパングループのSunday Morning Factory株式会社(通称サンモニ)に勤めています。

 数カ月前まで環境、社会問題に関心がなかった私が、ひょんなことから本気で世界を良くしたいと思うようになり、ソーシャルビジネスの世界に飛び込んだ時に感じた“こっち側じゃなかった”人の意見として、つづっていきたいと思います。

悲しみの上に成り立ったフェイクファッション

 “The True Cost”というドキュメンタリー映画がきっかけで、大きな問題を抱えているファッション業界の真実を知り、大好きでキラキラしていたはずのファッション業界が一気に曇って見えたことが始まりでした。

 先進国では、きれいな店内にたくさんのすてきな商品が“お手ごろ価格”で売られていますが、そんな当たり前の光景は、たくさんの悲しみの上に成り立っていたことを知りました。

大量の在庫廃棄、常態化 最新ファッション、低価格販売の陰で

 「学校に行かず、毎日暗い工場で働く子どもたちはこの世界に夢や希望を持てるのか」

 「自分が大好きなファッションを通して悲しむ人がいる世界なんて最悪だな」

 そう強く思い、いつしか“ファッションを通して悲しむ人を無くす!”

 が私の人生の目標となりました。

ファストファッション爆買いから古着屋で一点ものと出逢うショッピングに変更=筆者撮影
ファストファッション爆買いから古着屋で一点ものと出逢うショッピングに変更=筆者撮影

どうすれば多数の意識を変えていけるのか

 環境問題に関心がない大多数の人たちを巻き込んでいくには、エシカルなビジョンやストーリーの共感を押し付けるのではなく、商品やサービスに感動しファンになってもらうことが大切だと思います。

 悲しいですが、過去の私のように問題を知っても“人ごと”として、目をつむってしまう人たちがたくさんいるからです。

 「ファッションラバーはファッションラバーにしか耳を傾けない」

 “人は興味関心がないものや人からの発信は見えないし聞こえない“ということです。

 たくさんの“興味関心”の入り口から感動を届ける事が多種多様な人を巻き込んでいくきっかけになるのではないかと思います。

 例えば、サンモニが持っているビジョンは“児童労働を無くすこと”ですが、発信方法は、出産祝いのオーガニックベビー服の販売です。

サンモニが展開するHaruulalaのベビー服=前田美穂さん撮影
サンモニが展開するHaruulalaのベビー服=前田美穂さん撮影

 これまでたくさんのお客様に購入していただきましたが、その理由の大半は“可愛いから”であり、ビジョンやストーリーに感動したからではありません。

 “私たちはこんなビジョンを持っているよ”というのは購入した後、初めて知る方の方が多いのです。

 つまり、サンモニでは商品そのものの価値を評価していただくことにより、バングラデシュでの雇用を生み出し、児童労働の減少へとつなげているのです。

お互い歩み寄ること

 いろいろ書きましたが、ファッションは本来すごく楽しいもので、たくさんの人の人生に彩りを与え、豊かにしてきました。

 <ファッションデザイナー・藤本ハルミさん 「上等のもの」知って パリコレに70歳で挑戦

 70歳でパリコレに挑戦。ファッションの可能性にはいつもワクワクする。

 「こんなにたくさんの問題があるんだから、服を買うのを、作るのをやめろ!」なんて、ファッションを、服を、愛し、生きがいにしている人たちに、ぶつけるのは正しいのでしょうか?

 問題をたたくだけでは根本の解決にはならないと私は思います。

 ベターな選択から始められるように、たくさんの人が問題に触れるきっかけを作り続けたい。

 そしてもし、この記事をきっかけに初めて問題を知った方がいるなら、自分の消費行動について少し考えてみてほしい。

 誰かが掘り下げたファッション業界の問題を、必死に埋めようと人生を懸け、挑んでいる人たちがいることを忘れないでほしい。

 いつの日か、ファッションを通して悲しむ人がいなくなる世界が訪れるように、私の挑戦はまだまだ続きます。

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北山里菜

Sunday Morning Factory Web magazine Set Me Free プロデューサー

1997年生まれ。人生のコンセプトは「ファッションを通して悲しむ人をなくすねん!」。ファッションに並々ならぬ情熱を注ぐ、ただの服好きだったが、ファッションが環境破壊と関わっていると知り、Fashion Revolution学生アンバサダーに就任。Web magazine SetMeFreeでも環境問題に触れるきっかけづくりをスタート。現在は株式会社Sunday Morning Factory(ボーダレス・ジャパングループ)で、バングラデシュの児童労働問題をなくす活動に取り組んでいる。