Social Good Opinion

「創造的な遊び」ではじまる社会との関わり

山下里緒奈・P L A Y B L E 代表
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山下里緒奈さん
山下里緒奈さん

 Z世代が「ポジティブな社会をつくるためのオピニオン」を発信する「Social Good Opinion」。ここには、未来を見据えて幅広く活動されている方々の社会を捉え直すヒントが散りばめられています。

 しかし、2019年に日本財団によって行われた18歳意識調査を見ると、自分の国の将来に対してネガティブに捉えている割合がかなり多いことが分かります。

日本財団 18歳意識調査 「国や社会に対する意識(9カ国調査)」より引用
日本財団 18歳意識調査 「国や社会に対する意識(9カ国調査)」より引用

 日本の将来は「悪くなる」と答えている人の多さはもちろんのこと、「どうなるか分からない」と回答している割合が多いことも気になります。

 社会課題に対する無関心さ。これらは、若者の意識の問題だと言われたり、日本の教育が“思考型教育”ではなく“暗記型教育”に偏っているからだという主張があったり、至る所で議論が繰り広げられている問題の一つだと思います。

 身の回りの社会に関心を持ち、将来に希望を見いだせる人が増える社会に、どうすれば変わっていくのだろう。私は、そのヒントの一つが「幼少期からの遊び」に隠されていると思います。

社会への関心を生む「生産活動」としての遊び

 私は遊びの可能性を探究したくて、デンマークに留学しました。現地では三つの幼稚園でインターンをさせていただきました。

 とある幼稚園では、1日の過ごし方を子どもたちで決め、ほとんどの時間を外で過ごします。木登りをしたり、落ちている木の枝を武器に見立てて勝負したり。自分たちでエリアとルールを決めて自転車レースをしたり、先生たちと外で火をおこして料理をしたりする日もありました。

木のぼりを教えてくれる男の子。自分たちで教え合ってできるようになったのだとか(2019年筆者撮影)
木のぼりを教えてくれる男の子。自分たちで教え合ってできるようになったのだとか(2019年筆者撮影)

 最近は、ゲームやおもちゃが充実しているため、それらを使って楽しむ「消費活動」としての遊びが多いように感じます。一方で、この幼稚園のように、意味を持たない自然の道具を何かに見立てて遊んだり、一から料理を作って自分たちで食べてみたりする、というような「生産活動」としての遊びもとても大切だと思います。

 子どもたちはこれから成長し、より広く複雑な社会に足を踏み入れていく時がきます。その時に、「生産活動」としての遊びをたっぷり楽しんだ子どもたちは、より豊かな想像力を発揮し、社会の見えない部分や課題に目を向けられるようになるのだと私は思います。

 例えば、自分の食べる物や着る物、道具がどのようにうまれ、どのように運ばれ、自分の生きる環境にどんな影響を及ぼしているのか。

 こういったことへの関心は、ただモノを与えられて遊んでいるだけでは気づけない部分も多いと思います。今世界で起こっていることにどれだけ興味を持てるかということに、幼少期からの創造的な遊びが少なからず影響していると感じた経験でした。

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幼稚園の先生はエンターテイナーだった

 もう一つ、デンマークのとある幼稚園で過ごしていて印象的だったことがあります。それは、先生たちがエンターテイナーだったということです。

 語弊があるといけないので補足をすると、先生たちは子どもたちと同じことをして遊んで“あげる”のではなく、自分たちが楽しいと思うことに全力で取り組むことによって、子どもたちの好奇心に火をつけていると感じたのです。

 積み木のような細い木をどこまで積み上げられるか、若い男の先生たちが躍起になって競争したり、金曜日だから、と言って好きな音楽をかけてノリノリで踊っていたりしたことも。子どもたちもそんな雰囲気に引かれて集まってきて、その輪に入ってみたり、新しい遊びのひらめきを得ていくような瞬間をたくさん目にしました。

料理などをする火起こし場にて、落ちている炭で絵を描けることに気づき没頭している子(2019年筆者撮影)
料理などをする火起こし場にて、落ちている炭で絵を描けることに気づき没頭している子(2019年筆者撮影)

 かと思えば、コーヒー片手にのんびりおしゃべりしていることもある先生たち。

 子どもたちが、次に何をやろうかと葛藤している時や今の遊びに飽きてしまっている時こそ、子どもたち自身の好奇心や創造力が発揮されるチャンス。大人が手取り足取り教えなくても子どもたちは「できる」ということを、先生たちは知っているかのようでした。

 子どもの遊び方を見ているとき、大人の私たちからするとどこか不完全で、カオスだと感じる場面もあるかもしれません。

 でも、その不完全さに伸びしろがあるし、カオスの中に秩序や法則を自ら見つけ出していくことこそが本当の学びだと私は思います。

 そして、そんな主体的な遊びや学びが、これから社会で起きていることを“自分ゴト”として捉えていくきっかけになると考えています。

遊ぶことは自分を表現する一つのモード

 自分の意見を伝えることよりも、正しい知識を持っているかが問われる教育。表層的な情報に踊らされ、どこかニュースを人ごとにしてしまう空気感。

 でも、私たちがこれからの社会をつくっていくために必要なのは、物事の核に迫る“想像力”と自分の願いを形にできる “創造力”だと思います。

 そのために、好奇心や探究心をエンジンとして、自分の可能性を自分の力で広げていく“きっかけ”となるような遊び場をつくりたいと思い、PLAYBLEを立ち上げました。

 遊ぶことは自分を表現する一つのモード。

 何か明確に決まった評価軸もなければ、誰かに何かをやらされるわけでもない。

 だからこそ、遊びは自分自身を知り、興味関心を広げる入り口になると思うのです。

 ポジティブな社会へのヒントを持った大人と想定外の発想で驚きをくれる子どもたち。この2者が「教える―教わる」の関係ではなく、遊び場を「共創」していくことをキーワードに、学びあい続けられる空間をつくっていきたいと思っています。

 遊びのパワーを信じてみたら、社会との関わりはもっとおもしろくなると思うから。

山下里緒奈

P L A Y B L E 代表

1997年生まれ。可能性を広げる遊びの探究と、遊びでデザインする学びの場づくりに取り組む団体「P L A Y B L E」代表。昨年トビタテ!留学JAPANに採用され、デンマークへ留学。三つの幼稚園でのインターンや、二つの家庭で住み込みのベビーシッター、デンマークのフォルケホイスコーレに滞在しながら、遊びや学びの価値観に触れる。東京外国語大学国際社会学部5年(休学中)。こども国連環境会議推進協会(JUNEC)事務局委員。