ウェストエンドから

新型コロナ危機による「不平等な死」 欧州のマイノリティー感染拡大から

服部正法・欧州総局長
  • 文字
  • 印刷
新型コロナ感染によって亡くなった英国の医師、アムジェド・エルハウラニさん=弟アマル・エルハウラニさん提供
新型コロナ感染によって亡くなった英国の医師、アムジェド・エルハウラニさん=弟アマル・エルハウラニさん提供

 新型コロナウイルス感染による死者数が3万人を超え、イタリアを抜いて欧州で最悪となった英国。犠牲者や重症者を民族・人種別に見ていくと、マジョリティー(多数派)の白人に比べ、マイノリティー(少数派)の黒人や南アジア出身者など移民とその子孫たちの割合が際立って高いことが明らかになってきた。これは英国だけにはとどまらない。感染者・死者共に世界で最も多い米国でも似た傾向が指摘される。また、感染拡大が比較的制御されていると指摘される北欧では、コロナ禍が「難民」を直撃していた。次第に実態が分かってきた、新型コロナ感染がもたらす「不平等な死」について報告する。

 「不平等な死」が英国で可視化されるきっかけとなったのは、最前線で働く医師たちの新型コロナ感染による死亡が相次いだためだった。感染拡大当初の4月上旬までに亡くなった医師10人が全員、英国では「BAME」(Black, Asian and minority ethnic=黒人、アジア人、その他の民族的少数派)と呼ばれるマイノリティーだったのだ。

 英国には、国民医療サービス(NHS)という国営の医療システムがある。人手不足で受診を待たされるなど問題も多いが、「ゆりかごから墓場まで」と言われた第二次大戦後の「福祉国家・英国」を支えた屋台骨で、国民の信頼は厚い。英国内で感染者と死者が日に日に増えていく中、国民はNHSの医師や看護師らに対し、街中や病院周辺などに「ありがとうNHS」などと書かれた手書きのポスターなどを掲げ、声援を送ってきた。

この記事は有料記事です。

残り5818文字(全文6464文字)

服部正法

欧州総局長

1970年生まれ。99年、毎日新聞入社。奈良支局、大阪社会部、大津支局などを経て、2012年4月~16年3月、ヨハネスブルク支局長、アフリカ特派員として49カ国を担当する。19年4月から現職。著書に「ジハード大陸:テロ最前線のアフリカを行く」(白水社)。