Social Good Opinion

廃棄される花にもう一度命を

冨塚由希乃・株式会社RIN フラワーサイクルアンバサダー
  • 文字
  • 印刷
冨塚由希乃さん=小澤亮さん撮影
冨塚由希乃さん=小澤亮さん撮影

捨てるということ

 突然ですが、自分の作ったおいしい料理を自分で捨てたことはありますか。

 今、全国でそれに似た行為を余儀なくされている方がたくさんいます。新型コロナウイルスの影響で花きの需要が落ち込み、全国の花農家が自分たちの手で、大量の花を廃棄しているのです。

 私は、花を捨てるという行為自体は、悪ではないと思います。花に限ったことではなく、大量生産消費社会の中で販売用として作られたものは、需要と供給のバランスが変動する限り余剰が出てしまうからです。ただ、「なぜ捨てられるのか?」という部分を深く考えてみてください。

市場に出す前に長さが足りず出荷できなかったカーネーション。農家さんから買い取らせていただきました(筆者撮影)
市場に出す前に長さが足りず出荷できなかったカーネーション。農家さんから買い取らせていただきました(筆者撮影)

 生産者さんにとって商品は子どものように可愛いものだと思います。何が何でももうけたい、という理由だけでお花を生産しているのではなく、丹精込めて作ったすてきな作品を、すてきだと感じてもらえるお客様に大事にしてもらいたい、そう思っている方が大半だと思います。

 そんな花が出荷できない理由はたくさんありますが、「規格」というものをご存じでしょうか?

 「規格外野菜」という言葉は耳にしたことがあるかもしれませんが、その規格は野菜に限らず花や畜産、その他の加工品にもあります。葉や花の数、茎の分かれ方、曲がり方など何らかの理由で規格外になったものは、原則として大きな市場では取り扱うことができず、土に戻すことになります。

 素人目では正直、規格外かどうかは見分けがつきません。私たちはこのような規格外と呼ばれるお花を買い取りドライフラワーにしたうえで、ワークショップや作品制作の材料にしています。

「母の日」ではなく「母の月」に

 今年は、全国で5月末までを「母の日」期間とする「母の月」という取り組みがありました。理由は二つあります。一つ目は、店舗で購入される方の感染症対策のため。二つ目は、通販で購入される方が多くなったため、配送業者の方の負担を減らすことです。

農家さんが出荷前に長さが足りないものを送ってくださいました。部屋の雰囲気がぱっと明るくなります(筆者撮影)
農家さんが出荷前に長さが足りないものを送ってくださいました。部屋の雰囲気がぱっと明るくなります(筆者撮影)

 <5月いっぱい「母の日」に 広島の生花業界呼びかけ コロナで売り上げ減少

 こういった状況による意識の変革は、母の日以外にも応用できると思っています。例えば節分では、恵方巻きの大量廃棄がニュースでも話題になっていました。

 確かに、一日だけに限ってイベントを設定することは特別感を演出し、購買意欲を増進させます。その一方で、期間を限定して販売すると、その期間が過ぎれば一斉に捨てることになるため、食品を含む商品ロスの大きな要因の一つになります。

 私が見てきた廃棄された商品は、ほとんどがこれでした。中身は変わらないのに、パッケージが変わると売れなくなってしまうから捨てる。経済的合理性の観点から言えば廃棄はやむを得ないという考えになるのかもしれません。ただ、トレンドや販売促進キャンペーンに振り回される前に、そもそもそれが本質的な行動なのか考えてほしいと思います。

オンラインショップ「Flower cycle marche」にて販売していたバラ風呂用の高級バラ(筆者撮影)
オンラインショップ「Flower cycle marche」にて販売していたバラ風呂用の高級バラ(筆者撮影)

 今年の考え方が浸透して来年以降も柔軟な考えにシフトする世の中になっていけばいいと考えています。

 <コロナで売り上げ減少、北海道の花農家 「母の日月間」に期待

生産者と消費者の懸け橋になるということ

 私は現在、廃棄花の活用に取り組む株式会社RINにて、フラワーサイクルアンバサダーとして捨てられる花を救う活動を30人ほどのメンバーと行っています。

 なかでも今回のコロナ状況下の施策として実施した、花農家と消費者をつなぐオンラインショップでの販売を間近で見ていたことで、たくさんの気づきを得られました。

 まず、生産者と消費者を結ぶ仕組みづくりに大きな可能性を感じました。もちろん、今まで成り立っていたように、市場から小売りを通じて販売される方法で買うお客様もたくさんいます。ただ現在の市場では出回らなかったり、イベント中止によるキャンセルで廃棄となったりする花もたくさんあります。

与論島で農家さんからいただいた規格外のトルコギキョウ。つり下げてドライフラワーにしていきます(筆者撮影)
与論島で農家さんからいただいた規格外のトルコギキョウ。つり下げてドライフラワーにしていきます(筆者撮影)

 お花を自ら捨てている花農家さんの現状を伝え、SNSを中心に告知し希望者を募ったところ1日で約500人の購入者が見つかり、個人で販売できるサイトを通じて2万5000輪のバラを購入により救うことができました。その反響は大きく、1カ月のうちに2400人以上の買い手とマッチングすることができて、なんと7万本もの花を救うことができました。これを機に、今まで花を買わなかった方の手にも花を届けて、花のある暮らしをもっと身近な存在にしていきたいです。

最後に

 この活動に対する見え方はさまざまだと思いますが、「もったいないお花を減らしたい」という思いの根本の部分は「今あるものを大切にする」、そして「長く使い、楽しむ」という気持ちだと思っています。

 そして、今回のコロナ状況下での被害を人々が認識するにつれ、困っている人がいたら何かしらの方法で助け合う、という結束力が以前よりも強まった気がします。もちろん経済も含めて、悪影響は数えきれないほどありますが、この機会にできた助け合い精神の輪は、今後も広まっていってほしいです。

冨塚由希乃

株式会社RIN フラワーサイクルアンバサダー

1998年生まれ。幼少期から地球環境に問題意識を持ち、世界全の貧困や食糧問題の入り口から食品ロス問題を軸として啓発活動、インターンを行う。若手不足地域の農業の手伝いを通じて廃棄の現場や生産者の作る思いに触れたことで、丹精込めて作った商品を廃棄せずに欲しい方に届けたいという強い思いをより一層持つ。昨年夏からロスフラワーを使用したワークショップの開催などを通じて、花を含むあらゆる流通においての廃棄事情を発信。ロスフラワー第一人者である河島春佳さんの運営する株式会社RINのフラワーサイクルアンバサダーとして活動中。