Social Good Opinion

バリ島エシカルホテルで見つけた新しい気候変動へのアプローチ

島田颯・早稲田大学国際教養学部
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島田颯さん
島田颯さん

昨年オープンしたばかりの次世代型ホテル

 東南アジアに位置する世界第4位の人口を抱える国・インドネシア。その中でも、毎年多くの日本人が足を運ぶのがリゾート地・バリ島です。空港から車で1時間ほどの場所にある田園風景が広がる土地・ウブドに2019年9月、次世代型のエシカルホテルが誕生しました。その名もMana Earthly Paradise。

 訪れた人が「現代の桃源郷のようだ」と表現するように、あたり一面に田んぼが広がる場所に、このエシカルホテルは自然と調和する形で位置しています。

田んぼの中に広がる六つのヴィラと一つのヨガシャラ=Mana Earthly Paradise提供
田んぼの中に広がる六つのヴィラと一つのヨガシャラ=Mana Earthly Paradise提供

 このMana Earthly Paradiseがなぜ次世代型ホテルと呼ばれているのか。それは持続可能な未来を体現した施設になっているからです。

 ホテルで使用する照明用の電気は、すべてヴィラの屋根についているソーラーパネルから作られています。また、使用する水はすべて雨水を利用。レストランでは、ガラス瓶をアップサイクル(古くなったものを捨てずに新しいアイデアやデザインを加えることで別の製品を作る)してできた食器が使われています。ホテル内のパーマカルチャーガーデンで育てた野菜がレストランで調理され、食べることができ、まさに地産地消です。

 施設中のありとあらゆるところに環境に良い取り組みがちりばめられているMana Earthly Paradiseは、訪れた人に楽しみながらおしゃれにエコを実感できる機会を提供しています。

SDGsを達成した未来を感じる

 私は、19年4月からバリ島に1年間滞在して、エシカルホテルの開店準備からオープニングまで関わらせていただきました。そこで持続的な社会をつくる新しいアプローチを学びました。それは、「五感を使って未来を感じる」ということです。

ウエルカムドリンクのコップは飲料水のグラスをアップサイクル。マドラーはレモングラスの茎=筆者提供
ウエルカムドリンクのコップは飲料水のグラスをアップサイクル。マドラーはレモングラスの茎=筆者提供

 エシカルホテルで体感できることは、再生可能エネルギーを使った暮らしをすること、土を耕して食べ物を自分で育てること、自然と共存することなどさまざまです。そしてそれは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に照らしあわせてみると、クリーンなエネルギーを実現した社会であり、つくる責任、つかう責任をみんなが持った社会であり、地球を大切にする社会を感じるということです。

気候変動対策にアクションを求めるZ世代

 いま日本を含め世界では多くのZ世代の若者が気候変動に対して「危機感」をもっています。それは、17歳のグレタ・トゥーンベリさんが始めたグローバル気候マーチが瞬く間に150カ国、4500カ所へと広がっていったことに表れています。

 <温暖化、怒れる若者たち グレタさん「もう待てない」 スペイン1.5万人デモ

 Z世代の私たちはSDGs達成を自分事として捉え、行動を起こしています。それは、社会のあり方がこのままではいけないということを実感しているからです。気候変動による異常気象、気温上昇によって失われる自然。すべては私たちが親世代になるころに直面する可能性が非常に高い課題です。手遅れになる前に課題解決に向けて行動するなら、今しかない。そんな危機感を持っているZ世代は多いのではないでしょうか。

エシカルホテルでは、オーガニック野菜を栽培しています=筆者提供
エシカルホテルでは、オーガニック野菜を栽培しています=筆者提供

 しかし、行動を起こす人が多い一方で、私は気候変動マーチというデモによる社会変革には、限界があるとも感じています。世界では、「社会を変えるには声を上げなければならない」として、デモが国の政策や法律を変えてきた歴史があります。それにくらべ、日本では「声を上げることで周りから浮いてしまう」という、出るくいは打たれる文化がまだまだ根強く残っています。

 それは若者世代でも同じです。SNSで「気候変動にアクションを!」と声を上げる人のもとに賛同する人々が集まる一方で、それを見て「自分はちょっとそういうの苦手」と逆に距離を取ってしまう人がいるとも感じています。それは若者の間でも分断を生んでいるようにも思えます。

社会変革のうねりをつくる新しいアプローチ

 社会を変えていくには「マイノリティーが声を上げる」ことは必要です。その一方で興味・関心を持たないマジョリティーをどう巻き込んでいくかということも考えていかなければいけません。

エシカルホテルを運営する社会的企業Earth Companyのチームメンバー=筆者提供
エシカルホテルを運営する社会的企業Earth Companyのチームメンバー=筆者提供

 バリ島の次世代型エシカルホテルは、そのマジョリティーの人たちをインスパイアする機会として非常に有効だと思います。自然に囲まれている、おしゃれで雰囲気のいいホテル。そこに泊まってみたら実は環境にいい取り組みをたくさんしていて、「こんな暮らしを日本でも取り入れていきたいな」と思っていただく。それが結果として日本でもできるエコな生活の実現につながり、SDGs達成のための行動を取るようになる。

 住み心地のいいエコを体験して、地球をもっと大切にするマインドを育む。それが、私がバリ島で見つけた環境問題解決への新しい方法でした。

島田颯

早稲田大学国際教養学部

1996年生まれ。大学1年生時に休学をし、インドネシアでの国際NGOの海外インターンシップに1年間参加。その後、インドネシア大学への交換留学を経験。社会変革の現場で活動したいと思い、2018年5月に社会起業家の支援を行う社会的企業「Earth Company」にインターンとして参加。19年4月から同団体が運営を行うエシカルホテルで活動。早稲田大学国際教養学部に所属。トビタテ留学JAPAN!新興国コース10期。