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資金難の中、アパート建設に挑む金正恩氏の「秘策」

米村耕一・中国総局長
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2017年に金正恩委員長の肝煎りで建てられた高層アパートが並ぶ黎明通り=平壌で2017年4月、朝鮮中央通信・朝鮮通信
2017年に金正恩委員長の肝煎りで建てられた高層アパートが並ぶ黎明通り=平壌で2017年4月、朝鮮中央通信・朝鮮通信

 「首都市民の生活保障について、早急に解決すべき問題がある」。今月7日に行われた朝鮮労働党政治局会議で、金正恩委員長がときおり見せた厳しい表情は、北朝鮮経済がこれまでにない水準の困難に直面していることをうかがわせた。金委員長はアパート建設をはじめとした課題に「対策を立てる」とも強調した。厳しい資金難の中でも住宅建設を可能にする金委員長の「秘策」について、経済専門家は「住民が持つ資金を吸い上げる方法を考えているはずだ」と指摘する。北朝鮮で「経済改革」が進んでいるのか。

 北朝鮮が核・ミサイル実験を相次いで強行した2016年以降、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の経済制裁は強化され、鉱物や水産物など北朝鮮の主要品目は軒並み、輸出できなくなった。最大の貿易相手国であり、「後ろ盾」でもある中国などへの輸出も激減。韓国貿易協会のデータによると、15年に約31億ドル(約3300億円)だった輸出額は、19年には2億6000万ドル(約300億円)余りと、10分の1以下に減っている。生活必需品の原材料などを含む輸入はそれほど減らせないので、貿易収支の赤字は17年が14億7000万ドル、18年が19億9100万ドル、19年が24億2200万ドルと年々、増えた。

 さらに今年は新型コロナウイルス対策で北朝鮮は2月初めから国境を固く閉ざしており、「感染者は一人も出ていない」と主張しているものの、経済的な打撃はあったとみられる。

 北朝鮮において石炭や鉄など鉱物資源輸出による外貨収入は、兵器開発などに使われるのはもちろんだが、軍や党、国家機関がその構成員を養い、必要な事業を行う原資にもなっている。13~16年に韓国の情報機関、国家情報院のナンバー2である第1次長を務めた韓基範氏は、その著書で「北朝鮮には12~16年の年平均で、石炭12.2億ドル、鉄鉱石3.2億ドル、金4億~5億ドルの外貨収入があり、石炭は…

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米村耕一

中国総局長

1998年入社。政治部、中国総局(北京)、ソウル支局長、外信部副部長などを経て、2020年6月から中国総局長。著書に「北朝鮮・絶対秘密文書 体制を脅かす『悪党』たち」。