説明責任と透明性を欠く政治の弊害は大きい

田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
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田中均氏=根岸基弘撮影
田中均氏=根岸基弘撮影

 コロナパンデミックは世界の政治経済を混乱させたが、少なくとも先進諸国とアジアについては感染拡大のペースは鈍化し、経済的復活に向けて活動制限が緩和されつつある。

 深刻な危機において多くの国では政権の下に結集しようという求心力が働き、通常、指導者の支持率は上がる。欧州ではピーク時には独メルケル首相、仏マクロン大統領をはじめ軒並み70%を超えるような支持率の上昇が見られた。顕著な例外は米トランプ大統領と日本の安倍晋三首相だ。両首脳ともコロナ危機対応の評価は芳しくなく、米国内では人種差別問題での反発、日本では検察庁法改正案問題や河井克行前法相夫妻逮捕問題などで政権の支持率は停滞し、不支持は支持を大きく上回る。他方、両首脳とも固い支持層を有し、実は40%前後の支持率を大きく割り込むことはないという点でも共通している(トランプ大統領は白人労働者階級、安倍首相は若者の支持は堅固だと言われる)。そういう日米両国は、いま国内政治で重要な局面を迎えている。日米両国の政治の問題点とは何か、探ってみよう。

 米国では、現在トランプ大統領が本年11月の大統領選挙で再選達成なるかどうかの瀬戸際にあるが、国内政治で最大の問題は社会の深刻な分断である。持てる者と持たざる者、白人と非白人、保守と革新。ツイッタ―などSNSを通じるトランプ大統領の極端な言動は社会の分断を一層深くしているが、その中で米国の民主主義的制度(Institution)はそれなりに機能していると言われる。例えば、人種差別的事件の発生(ジョージ・フロイド事件―偽造紙幣使用容疑で拘束された黒人男性が白人警官に首を膝で押さえつけられ窒息死)をきっかけに全米でデモ抗議が拡がり、トランプ大統領が一部の暴徒化したデモ参加者を「テロリスト」と呼び、連邦軍出動を示唆したのに対し、国防長官や軍首脳が軍を国民に向かわせるべきでないと明確に反対、歴代大統領が…

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田中均

日本総合研究所国際戦略研究所理事長

1947年生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官、在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、05年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、10年10月に(株)日本総合研究所国際戦略研究所理事長に就任。06年4月より18年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、19年)、『日本外交の挑戦』(角川新書、15年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、09年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、09年)など。