
しばらく忘れられかけていたマイナンバーカードが、一躍脚光を浴びることになった。これまでの国民の関心のなさは、普及率が15~16%であることなどから明らかだ。
それがこれほど注目されたのは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う一律10万円の現金給付が、マイナンバーカードがあれば申請が簡単になり迅速な給付が受けられるとの触れ込みがあったからだ。
ところが、パソコンでの申請にはカード読み取り機材が必要。暗証番号の忘れや入力ミスなどで、自治体の窓口には長蛇の列ができた。また、振込先の口座番号などの確認に追われ、結局は、オンラインは郵送申請より給付が遅くなるかもしれないという告知があり、ついにはオンライン申請の受付を停止した自治体も相次いだ。
当初、収入が落ち込んだ世帯に対し30万円を給付する決定を、一律10万円給付に急きょ切り替えたのは、支払いが迅速になることも大きな理由ではなかったか。まさに、政府のシステムの信頼に関わる深刻な事態となった。
一方、米国では個人が持つ社会保障番号と税務申告データをもとに支給対象者が選定でき、法律成立から約2週間で各人の銀行口座に振り込まれた。スイスでは申請から数日で緊急融資が受けられる。ドイツやフランスなど欧州でも、行政システムのデジタル化が迅速な現金給付に結びついている。このスピードを可能にしているのが、社会保障番号や納税者番号などの国民番号と銀行口座のひ…
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