衆院比例代表「73歳定年制」堅持を 多様性のある自民に

小林史明・自民党青年局長
小林史明氏=須藤孝撮影
小林史明氏=須藤孝撮影

 自民党のベテラン議員有志の方々が、党が内規で定める衆院比例代表候補の73歳定年制を見直すよう二階俊博幹事長らに申し入れをされた。報道で知って非常に驚いた。青年局として定年制の堅持を強く求めたい。

多様な人材にチャンスを

 73歳定年制はあくまで衆院比例代表が対象だ。小選挙区に定年はない。73歳を過ぎると比例代表との重複立候補ができなくなる制度だ。

 小選挙区は個人名を書いてもらう選挙だが、比例代表は党への支持を元に、当落が決まる。だからこそ、国民の期待に応えられるよう、どのような組織を作っていくか、党の戦略で決めるべきものだ。だから多様な人材を受け入れられるように、新しくチャレンジする人、あるいはさまざまな事情から選挙区で地盤が強くない人に機会を作る意味がある。

 年齢だけではない。女性や障害を持った方、そのほかにもさまざまな背景を持った人材が組織にいることは、我々が政策を作っていくうえで大きな力になる。そういった人たちの活躍によって自民党の政策の幅が広がる。

青年局として取り組む

 青年局は幅広い年齢に政治参画を促していくことを目的としてできた組織だ。なぜ我々がこれだけ本気でやっているかというと、国会議員だけの問題ではないからだ。国会議員は46人。地方議員が1325人。そして党員20万人。これが45歳以下の青年局の仲間だ。

 6月15日に全国の地方議員ら100人以上が参加してウェブ会議をしたが、明確に定年制を堅持すべきだという意見だった。みんなの強い思いを背負っているからこそ、青年局全体として取り組んでいる。

党内から賛同の声

 岸田文雄政調会長は記者会見で「衆院の比例に定年制を設けることについては意味があると思っている」と発言された。青年局長を経験している棚橋泰文衆院予算委員長や、金子恭之政調会長代理からも支持していただいている。菅義偉官房長官とは電話で話したが「絶対に撤廃はない」と言っていただいた。

 青年局の上司にあたる山口泰明組織運動本部長からは、自身も定年制の対象になるのだけれども「絶対に撤廃させない」と言っていただいた。山口氏は「(2003年に)定年制を勝ち取った時に、俺たちは総務会で毎回、毎回発言をした。当時の総務会長にまたですかと言われたが、それでも言い続けた。自分は今の年齢になってみて思うけれども、それでも定年制は堅持すべきだ。徹底的に闘うべきだ。最後まで俺が後ろで応援している」と激励してくれた。

 二階幹事長は記者会見で「有権者に選んでもらうことが大切だ」という趣旨の発言をされている。我々は小選挙区のことをおっしゃっていると理解している。候補者個人が有権者に選ばれるように努力することに加え、党としても有権者から期待され支持される組織である必要があるので、我々の考えを理解してもらえるように引き続きお話をさせていただきたい。

人を育ててほしい

 定年制の見直しを求めるベテラン議員の有志の方々の申し入れ書に「人生100年時代」という言葉が出ていた。この言葉は、16年に「2020年以降の経済財政構想小委員会」で我々当選1期から3期生が議論を始め、骨太方針にも盛り込まれた「人生100年時代の社会保障改革ビジョン」から来ている。

 この政策提言は年齢に関係なく意欲と能力を生かすということであって、働き方の柔軟化も盛り込まれている。特定の場所でなければ活躍できないという考え方を変えようというものでもあった。「人生100年時代」という言葉を引いていただくならば、全体で考えてほしい。

 我々もベテランの方に育てていただいた。人を育てるというのも先輩方の大切な仕事だ。実力のある先輩方は小選挙区で勝っていただき、そして人を育てるために、比例の枠を別の人材に提供することも重要なことではないかと思う。

定年制があったから風通しが良くなった

 新型コロナウイルスの感染拡大によって国民は大変な状態にある。必要な政策を一日でも早く届けることが国会議員の役割だ。定年制を見直すという提案は、結局は政治家自身の立場を守る話だ。優先順位が違う。

 一方で、党内で議論が起こることは良いことだとも思っている。自民党は風通しがよい政党だ。定年制はベテラン議員の地位に関わる問題なので、当選回数が少ない議員には言いにくい部分があるのかと思われるかもしれないが、全くそんなことはない。

 賛同していただいている先輩からはどんどん言えと励ましていただいていますし、一方で反対側の人とも話をさせていただいている。そういう意見交換ができるのが自民党だ。そして若手でも発言できる環境があるのは、まさに定年制によって新しい人材を受け入れてきたからだ。

多様性の大事さを国民と共有したい

 これを機会に政治にとって多様性がいかに重要かということを国民の皆さんと共有したい。そして自民党全体でも共有していきたい。

 やはり自民党は他党とくらべても女性議員が少ない。6月18日に岸田政調会長、下村博文選対委員長、林幹雄幹事長代理らに定年制堅持を申し入れた。その申し入れでも「女性をはじめとした多様な人材を」と明記した。特に下村選対委員長は、自民党に女性議員が少ないということについて強い問題意識を示していただいた。

 また、選挙権は18歳からあるが、被選挙権は25歳以上にならなければ持てない。この差は本当にこれでいいのかということも議論したい。今回の定年制の問題を、党の多様性と組織のあり方を考える機会にしていきたい。

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自民党青年局長

1983年生まれ。NTTドコモを経て、2012年衆院初当選。総務政務官兼内閣府政務官などを歴任。自民党青年局長、自民党行政改革推進本部本部長補佐。衆院広島7区、当選3回。自民党岸田派。