続クトゥーゾフの窓から

「ロシア領の割譲禁止」が平和条約交渉に与える影響は 改正憲法を読み解く

大前仁・外信部副部長
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日ソ共同宣言で「平和条約の締結後に引き渡す」と明記され、返還対象に挙げられている色丹島=色丹島で2017年8月、大前仁撮影
日ソ共同宣言で「平和条約の締結後に引き渡す」と明記され、返還対象に挙げられている色丹島=色丹島で2017年8月、大前仁撮影

 ロシアで7月1日、憲法改正の是非を問う全国投票が実施され、8割近くの賛成票を得て4日に改正憲法が発効した。改正された憲法では、プーチン大統領が任期を迎える2024年に再び大統領選に出馬することが認められており、最も長ければ83歳になる36年まで大統領にとどまれることになった。

 改正憲法には「ロシア領の割譲に向けた行為を認めない」という条項も盛り込まれた。北方領土が日本へ返還される可能性は摘まれてしまったのだろうか。この点を考察してみた。

 新憲法には200にのぼる改正条項が盛り込まれた。「ロシア領の割譲禁止」については、2月中旬に開かれた憲法改正の作業部会の席上、人気俳優のウラジーミル・マシコフ氏が北方領土をめぐる動きに言及したうえで、この条項を提案したのがきっかけだった。同席していたプーチン氏は「その考えは気に入った」と笑みを浮かべ、専門家に研究させる意向を表明。結果として改憲案の一条項に加えられたのだが、このやりとりについては…

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大前仁

外信部副部長

1969年生まれ。2008~13年、18~20年にモスクワ支局勤務。現在は旧ソ連諸国や米国の情勢、日露関係を担当。