中東・砂の迷宮から

1964東京五輪 聖火最終ランナーの「伝言」

真野森作・カイロ特派員
  • 文字
  • 印刷
開会式。国立霞ケ丘陸上競技場北門から場内に入場した聖火。ランナーは坂井義則さん=東京都新宿区の国立霞ケ丘陸上競技場で1964年10月10日午後3時過ぎ、橋本保治撮影
開会式。国立霞ケ丘陸上競技場北門から場内に入場した聖火。ランナーは坂井義則さん=東京都新宿区の国立霞ケ丘陸上競技場で1964年10月10日午後3時過ぎ、橋本保治撮影

 7月に入り、日本は今年も豪雨災害に襲われている。遠く中東のシリアやイエメン、北アフリカのリビア、東欧のウクライナなどでは終わりの見えない紛争が続く。それに加えての新型コロナウイルスである。半年前には予想もしなかった世界的流行は今のところ終息する気配がない。効果的なワクチンが開発されて普及するまでは、「密を避けろ」と呼びかけ合い、マスクをつけ、なるべく引きこもるしかないのだろう。

 本当だったら今ごろ――。既にそう考えることも少なくなったかもしれない。いくら考えても変わってしまった現実はどうしようもないからだ。今できることに思考を振り向けた方がよい。卑近な例だが、私もエジプトに赴任して1カ月後の4月中旬、日本へ一時退避してはや3カ月が過ぎた。東京都内の民泊施設を数週間ごとに転々としながら、在宅での中東のニュースウオッチや、出社しての朝刊編集作業に携わっている。

幻となった今夏の聖火リレー

 新型コロナの日々をなるべく淡々と過ごしながらも、ふとした瞬間にやはり頭をよぎる。本当だったら今ごろ――。その一つは、東京オリンピック・パラリンピックだ。新型コロナがなければ、7月24日の五輪開会式へ向け、今まさに聖火リレーが東京・国立競技場の聖火台へと近づき、大きな盛り上がりを見せていたはずだ。私個人としては、商業化ゆえに炎天下の真夏に開催する夏季五輪のあり方や、膨らむ一方の五輪開催経費には大いに疑問を感じている。それでも、全世界から集まった選手が個々のベストを尽くす五輪の魅力は大きい。2014年にロシアでソチ冬季五輪を現地取材した経験からも、その点は断言できる(皮肉なことに、6年前に「平和の祭典」を開催したロシアは冒頭に挙げた紛争の多くで当事国である)。

 日本全国を駆ける聖火リレーを想像すると、思い出す人がいる。1964年10月の前回東京五輪開会式で最終ランナーを務めた坂井義則さんだ。1…

この記事は有料記事です。

残り2080文字(全文2878文字)

真野森作

カイロ特派員

1979年生まれ。2001年入社。北海道報道部、東京社会部などを経て、13~17年にモスクワ特派員。ウクライナ危機を現場取材した。20年4月からカイロ特派員として中東・北アフリカ諸国を担当。著書に「ルポ プーチンの戦争」(筑摩選書)がある。