菅原琢さんのまとめ

社会と政治のつながりを回復させる契機に #検察庁法改正案に抗議します をめぐって

菅原琢・政治学者
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衆院厚生労働委員会で、黒川弘務・前東京高検検事長の定年延長問題が絡む検察庁法改正案などについての質問について答える安倍晋三首相=国会内で2020年5月22日、竹内幹撮影
衆院厚生労働委員会で、黒川弘務・前東京高検検事長の定年延長問題が絡む検察庁法改正案などについての質問について答える安倍晋三首相=国会内で2020年5月22日、竹内幹撮影

 意見募集のよびかけ<#検察庁法改正案に抗議します に意義はあるの?>では、ネット上の政治運動の評価の難しさを指摘しながら、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ政治運動に関する意見を募りました。「ネット世論」の印象はノイジー・マイノリティー(目立つ少数者)により左右されることがあり、ネット上の運動の成果を「数」のみに求めることは危険だというのが主な「難しさ」です。

 ただしモデレーターとしては、それでもなお、ネット上の政治運動には意義があると考えています。いただいたコメントを紹介しながら、どのような意義があるのか、どのように考えていけばよいのか、探っていきたいと思います。

現実世界の政治行動はやはり重要

 「santama」さんは、「今回の検察庁法改正案廃案は、ネット世論が政治を動かしたのではなく、文春記事を事前に知った官邸に法案を引っ込める口実として便乗されてしまっただけです。ネット上の政治運動だけでは民意など顧みない為政者への影響力は小さく、投票や政党支援活動など直接的な政治行動に結び付つくことが示されて始めて意義を持つものだと思います」と指摘していました。

 ネット政治運動の「成果」を過大に見積もるべきでないのはもちろんのこと、結局重要なのは民主主義の正規ルートである投票であるというのはそのとおりだと思います。意見表明のみでは政策も政権も変わりません。選挙に影響がないなら、ネット上の「声」を政治の側は真剣に聞こうとはしないでしょう。

 その意味では、やはり「数」も大事ということになりそうです。「数」が背景にあり、選挙に影響が出そうな「声」であれば、政治家は耳を傾ける可能性が高くなるかもしれません。そしてだからこそ、あらゆる政治運動、政治勢力がネットで「数」を誇示、誇張しようとするのです。この問題については、後に改めて考えます。

少数の支持者に支えられた政権へ…

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菅原琢

政治学者

1976年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授など歴任。専門は政治過程論。著書に「世論の曲解」、「平成史【完全版】」(共著)、「日本は「右傾化」したのか」(共著)など。戦後の衆参両院議員の国会での活動履歴や発言を一覧にしたウェブサイト「国会議員白書」https://kokkai.sugawarataku.net/を運営。