Social Good Opinion

私たちの未来は私たちが切り開く

青柳雄大・できること会議共同代表
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青柳雄大さん
青柳雄大さん

 “If the world’s going to get better, it’s going to be up to you.” (世界が良くなるかどうかは、あなた次第である)

 この言葉は2020年5月にオバマ前米大統領が米国の高校生に向けて語ったスピーチの一文です。世界中でコロナウイルスが感染拡大している状況の中でこの言葉が強く印象に残っています。皆さんはこの言葉を聞いてどう感じますか?

 この記事では、将来に希望を抱けず、未来に無責任であった当事者の私がなぜ若者支援や多様性に関する社会活動をするに至っているのかについて少しお話しさせていただきます。

「無力感」を感じる日本の若者

 新聞やテレビでは「日本の若者は政治に関心がない」という言葉をよく耳にします。確かに統計データを見ても日本の若者の投票率は減少傾向にあり、若者の政治参加への無関心さは日本の社会問題になっています。私も以前まで政治・社会問題に対して全く興味がなく、選挙に行く意味が見いだせない若者の一人でした。「時間がない・忙しい」などのアンケート結果がでていますが、この問題の根本的な背景の一つに若者が抱える「無力感」が存在していると私は考えています。

内閣府 「我が国と諸外国の若者に関する調査」(2018年度)第2章 国家・社会関係からグラフ引用
内閣府 「我が国と諸外国の若者に関する調査」(2018年度)第2章 国家・社会関係からグラフ引用

 内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(2018年度)」によると「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」という質問に対して「そう思う」と答えた若者は3割強で、他国と比べても圧倒的に低い数値です。私たちの世代の多くが社会にインパクトを与えられないと感じてしまっているのです。

 ここで少しだけ視点を変えてこの問題について考えてみます。無力感を感じるのは個人の問題であり自分自身の責任なのでしょうか? 深く考えてみると実際はそうではないのかもしれません。私たち日本の若者が年功序列の価値観や社会風潮を当たり前に受け入れてしまい、若者が無力感を感じるような社会構造になっているのではないか、と私は考えています。

 この考えに至った経緯、そして無力感を払拭(ふっしょく)し、今の社会貢献活動に熱を入れて取り組んでいる背景は主に二つあります。

価値観を180度変えたデンマーク留学

 18年夏から私はデンマークの首都にあるコペンハーゲン大学にて1年間の交換留学生として留学をスタートしました。コペンハーゲン空港到着直後、電車を乗り間違えスウェーデンにたどり着いてしまうという大ハプニングから始まった留学でしたが、私の今までの価値観を大きく変えた貴重な1年間でした。

世界30カ国からの交換留学生が住む国際寮のルームメートたちと。デンマークで=筆者提供
世界30カ国からの交換留学生が住む国際寮のルームメートたちと。デンマークで=筆者提供

 <個人の意見が社会を作る」北欧がジェンダー平等の社会を実現するワケ

 上記の瀧澤千花さんの記事にもあるように留学先の同大学から21歳の現役女子大学生が欧州連合(EU)の欧州議会議員に当選し、大学内で大きな話題になりました。また、世界各国から集まる国際寮の友人たちとの日々の生活の中でも(米動画配信大手)ネットフリックスの話題と同じぐらいの頻度で、当たり前のように政治、人権、社会問題の話題があふれていました。そこで毎日実感していたのは、世界中の同年代の若者は「自分たちの未来を作る自覚と責任」を持って生きているということでした。未来を作るのは紛れもない私たちの世代であるということを留学中に痛感しました。

マイノリティーとして日本で生きること

 無力感から脱出した二つ目の背景として私のセクシュアリティーがあります。LGBTQ+(性的少数者)当事者である私は、小さい頃から「社会システムから除外される存在」であるという事実に直面していました。高校生だった私は「性的指向は矯正できるはずだから(注1)、この問題は自分でなるべく早く解決しなくてはいけない」という焦燥感に駆られる毎日を送っていました。

 (注1)このような考えは「異性愛が『普通』」という考えによるもので、性的指向を矯正するような治療は現在禁止されています。

 しかし、デンマークのリベラルな社会での生活を通して、徐々にセクシュアリティーは自分のアイデンティティーの一部にしか過ぎないと気づき始め、今現在は早稲田大学GSセンターという大学機関で学内外へ向けてLGBTQ+を含むジェンダーやセクシュアリティー関連の啓発活動をしています。

 左利きと同じぐらいの割合でいると言われている性的マイノリティーに対する法制度や国民の理解はまだまだ実現されておらず、性自認・性的指向で悩む多くの当事者は日々「生きづらさ」を感じています。

Copenhagen Pride 2019 にて=筆者提供
Copenhagen Pride 2019 にて=筆者提供

 <同性内縁「社会通念ない」 遺族給付金不支給 名古屋地裁判決)

私たちの未来は私たちで切り開く

 上記、二つの背景から私は今、社会活動に従事しています。活動を通していつも考えていることは、「何も行動を起こさないのであれば未来に変化はない」ということです。

 他人任せに未来が変わるのを待っていることは、楽かもしれません。しかし、社会的弱者は苦しみ続けます。だからこそ私は社会に対して声を上げ、走り続けます。

 そして新型コロナウイルスの影響でパラダイムシフトが起きようとしている今、私たち若い世代の声に社会が寛容になりつつあります。また、SNS(ネット交流サービス)の普及により同じ考えを持つ仲間を見つけ、発信していくことがより簡単になり、若者の声が届きやすい時代に拍車がかかっています。

 そんな今だからこそ、日本の若者が自分たちの未来を「自分ごと」として捉え、自分の未来に責任と自覚を持つ。そして社会に対して声を上げ、アクションを起こすというグローバルな潮流に取り残されないことが私たち日本の若者に求められているのではないでしょうか。

青柳雄大

できること会議共同代表

1999年生まれ。早稲田大学教育学部英語英文学科4年在学中。社会言語学と社会イノベーションを専攻。世界一幸せな国と言われる理由を探求するためデンマーク・コペンハーゲン大学にて1年間の交換留学を経験。帰国後、早稲田大学スチューデントダイバーシティセンター学生スタッフ(GSセンター)として学内で多様性の啓発活動に取り組む。学外では、Marriage for All Japanにてインターン生として同性婚法制化運動に取り組む一方、緊急事態宣言直後に立ち上げた若者支援プロジェクト「できること会議」共同代表としても活動。サステナブルシューズブランド Allbirds Japan のブランド・アンバサダーとして環境問題にも取り組む。地域貢献の一環として、地元自治体の男女共同参画地域リーダー。趣味はヨガと旅行で今までに27カ国に旅行・滞在。