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<「普通の人」がなぜ過激化するのか>歪んだ正義(1)

SNS上で受けた誹謗中傷に関する提訴会見で、記者の質問に答える伊藤詩織さん=東京都中央区で2020年6月8日、北山夏帆撮影
SNS上で受けた誹謗中傷に関する提訴会見で、記者の質問に答える伊藤詩織さん=東京都中央区で2020年6月8日、北山夏帆撮影

「自粛警察」はもともとある敵意や差別感情の現れ

 マスクをしていない人を激しく叱責する。政府の自粛要請下で地元以外のナンバーの車を傷つけたり時間を短縮して営業する店に嫌がらせをしたりする。中国人が経営する店やその関係者をSNS上で中傷する。

 新型コロナウイルス禍に現れたいわゆる「マスク警察」「自粛警察」現象は、人間の攻撃性を顕在化させた。

 「人を傷つける心―攻撃性の社会心理学」(サイエンス社)などの著書がある大渕憲一・東北大学名誉教授(社会心理学、現・放送大学宮城学習センター所長)によると、「災害や犯罪などによって社会不安が高まると、それに伴い人々の間で生じる不快感情が攻撃性に転化されやすくなる」という。

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