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<日常における過激化に潜む「置き換え」と喪失経験>歪んだ正義(2)

大治朋子・編集委員(専門記者)
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父親に虐待され亡くなった女児(当時10歳)が住んでいたアパートの部屋の前には多くの花やお菓子が供えられた。父親は裁判で「しつけが行き過ぎた結果」と証言した=千葉県野田市で2月15日、町野幸撮影
父親に虐待され亡くなった女児(当時10歳)が住んでいたアパートの部屋の前には多くの花やお菓子が供えられた。父親は裁判で「しつけが行き過ぎた結果」と証言した=千葉県野田市で2月15日、町野幸撮影

 イスラエルにあるヘルツェリア学際研究所の大学院を拠点に研究生活に入った私は、大学院で学びながら併設のシンクタンク「国際テロリズム研究所」(ICT)でインターンを始めた。研究者の求めに応じてデータを集めたりリポートを書いたりするのが仕事だ。

 研究者の中にインテリジェンス(諜報=ちょうほう=)を担当する専門家がいた。彼は複数の言語を使う環境に生まれ育った経験を生かし、世界中の過激派が集まるインターネット上の会員制フォーラムやダークウェブと呼ばれる「闇サイト」に行き交う情報の収集・分析を担当していた。ICTでは過激派の分析で彼の右に出る者はいなかった。

 ある日、彼と大学のカフェでコーヒーを飲みながらかねて疑問に思っていたことを聞いてみた。

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大治朋子

編集委員(専門記者)

 1989年入社。サンデー毎日、社会部、ワシントン特派員、エルサレム特派員などを経て現職。英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所客員研究員。2017年から2年間休職しイスラエル・ヘルツェリア(IDC)学際研究所大学院(テロ対策&国土安全保障論、サイバーセキュリティ専攻)修了、シンクタンク「国際テロリズム研究所」(ICT)研修生。テルアビブ大学大学院(危機・トラウマ学)修了。防衛庁(当時)による個人情報不正収集・使用に関する報道で02、03年度新聞協会賞受賞。ボーン・上田記念国際記者賞など受賞。単著に「勝てないアメリカー『対テロ戦争』の日常」(岩波新書)、「アメリカ・メディア・ウォーズジャーナリズムの現在地」(講談社現代新書)など。