Social Good Opinion

誰だって行動を起こせるし、起こしていい

杉浦由佳・Mend It Mine代表
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杉浦由佳さん=吉川仁さん撮影
杉浦由佳さん=吉川仁さん撮影

 環境問題、人権問題、経済格差……。社会で起こるさまざまな問題を解決するために、世界中でたくさんの人が日々、情報発信をしたり、アクションを起こしたりしています。私もこの夏、自分にできることをしようと、#MendItMineというファッション分野のムーブメントを始めました。

 「ムーブメントを始めるくらいだから、昔からファッションが大好きだったのだろう」。そう思う人も少なくないと思います。しかし実際は、ファッションは自分にとって新しいものでした。それでも、自分の気付きを社会にシェアすること自体に価値がある、と信じ、活動を始めました。

 この記事では、そんな私がムーブメントを起こす意義について、お話ししたいと思います。

ファッションとの出合い、発見

 私は以前から環境問題に強い関心を抱き、大学での勉強や、学生団体の立ち上げなどに取り組んでいました。ファッション産業に目を向け始めたのは、ムーブメントを起こす1年半くらい前です。環境への影響を考えてエシカルブランドから服を購入する同世代の友達に米国で出会ったり、エシカルファッションの分野で活動的な若者をインタビューしたりする機会があり、少しずつ興味を持つようになりました。そして、新型コロナウイルスによる自粛期間中、本やインターネット教材等でファッション産業の環境問題、そしてファッション自体についてさらに深く学び始めました。

 すると、大きな発見がありました。オシャレをすることと環境に配慮した行動が、深くつながっていると気付いたのです。オシャレの心構えとして、「服をたくさん買うのではなく、自分にぴったりの服を厳選し大切に持つのが良い」「古着を活用すればコストを抑えられるだけでなく、今は見つけにくいすてきなデザインに出合える」という考えが複数の本で共通していました。これはまさに、服の大量消費・廃棄から抜け出す発想だと感じました。オシャレに磨きをかけることと、環境や社会に配慮することが、トレードオフになるどころか、むしろ同時に進んでいく、というのは新鮮でした。ここから、ファッションへの可能性をより強く感じるようになり、この気付きをもっと広く共有したいという思いを抱きました。

#MendItMineで「メンディング」を提示する理由

 その後始めたムーブメント、#MendItMineは、「メンディングを通して、自分らしい服を着て、自分に自信を持つこと・環境や社会に配慮した行動を起こすこと」を目的としています。メンディングとは、直訳すると「修繕」ですが、私たちは「汚れたり、穴が開いてしまったりした服を直すこと。自由な発想でリメークすること」と定義し、より広い範囲を含めています。

#MendItMineのインスタグラム(筆者提供)
#MendItMineのインスタグラム(筆者提供)

 近年、国内で出回る衣料品の半分以上が売れ残る<大量の在庫廃棄、常態化 最新ファッション、低価格販売の陰で>など、服の大量生産・消費・廃棄の問題は深刻化しています。メンディングは、私がその現実を知った際、自分にできることがないかと探して取り組んだことでした。やってみると、古くなり着られなくなった服がよみがえっただけでなく、自分らしいデザインにしたり、クリエーティブに発想したりする点にも楽しさがあると気が付きました。そして、もっと多くの人に実践してもらうポテンシャルがあると直感したのです。

 今、ムーブメントの中で一緒に活動しているメンバーがメンディングに注目している理由もさまざまです。手元にある服を長持ちさせて、環境にやさしくしたいから。ワンポイント加えて、自分らしいデザインにしたいから。裁縫が好きだから。大切な人からもらった服を、直して着続けたいから。メンディングは、ファッション業界にまつわる大きな課題から、自分のパーソナルストーリーにまでアプローチできます。

 このように、メンディングは、人それぞれの意味合いを見いだせる行動だからこそ、さまざまな入り口からやってきた人々をつなげてくれると考えています。メンディングに関するストーリーをシェアすることで、お互いにファッションの捉え方や環境問題等に関する新しい気付きを得、より大きな輪を生めるのではないか。そう思って、今、#MendItMineというムーブメントに挑戦しています。

メンディングのイメージ。ボタンをつけたり、アップリケをつけたり、ダーニングをしたり、色々な方法があります。=小林ななこさん撮影
メンディングのイメージ。ボタンをつけたり、アップリケをつけたり、ダーニングをしたり、色々な方法があります。=小林ななこさん撮影

誰だって行動を起こせるし、起こしていい

 社会課題に対して何か行動を起こしている人を見ると、「その分野のことをよく知っていて、昔からパッションがあったのだろう」と自然に考える人は多いと思います。実際にそういうケースはたくさんあるでしょう。しかし、そうでないからといって、行動を起こせないわけではありません。私のように、小さなことをきっかけに課題意識を抱いたり、新しい発見をしたりする人は多くいると思います。そのときに、それを自分の心の中にとどめておくのではなく、一歩踏み出してみると、意外な反響があるかもしれません。

 行動を起こせば、たとえ小さな規模であっても、誰かの新たな気付きを生みます。そして、自分以外の人に気付きをもたらすことは、社会へインパクトを与えることだと私は思っています。社会の大きなパラダイムシフトは、そういった小さな行動の積み重なりによる素地があって初めて起こると考えているからです。

 より良い社会を作るためには、知識や行動力のある人が動くだけでなく、「誰であっても社会を動かせる」と一人一人が信じられることも必要です。ファッションを専門にしてきたわけでも、昔から強い興味を抱いてきたわけではない私が、ファッション分野のムーブメントを起こしているという事実が、小さな課題意識を持ちながらも、行動に移すのを躊躇(ちゅうちょ)している人の背中を少しでも押せたらな、と思い、これからも頑張っていくつもりです。

杉浦由佳

Mend It Mine代表

 1995年生まれ。Mend It Mine(インスタグラム)代表。東京大学大学院農学生命科学研究科修士2年。大学では生態学を専攻し、生物多様性の保全について研究すると同時に、どうサステナブルな社会を実現するかにも興味を持つ。気候変動に関する国際会議に学生を派遣する団体の設立、The Better Tomorrow Movementという国際的な若者団体のGlobal Ambassadorとしての活動、国際自然保護NGOでのインターンシップなどを通し、多方面からより良い社会の作り方を考えている。