虫の目 鳥の目 魚の目

<「自分は絶対に正しい」という思い込みが人間を凶暴にする>歪んだ正義(4)

大治朋子・編集委員(専門記者)
  • 文字
  • 印刷
NPO法人が運営するチャットの相談窓口には、ネットで誹謗中傷してしまった人たちの相談が寄せられることもある=横浜市内で、宇多川はるか撮影
NPO法人が運営するチャットの相談窓口には、ネットで誹謗中傷してしまった人たちの相談が寄せられることもある=横浜市内で、宇多川はるか撮影

不安から「正義」を振りかざす

 「なんでこの時期に東京から来るのですか? 知事がテレビで言ってるでしょうが!! 知ってるのかよ!!」「さっさと帰ってください。皆の迷惑になります」

 東京都内在住の男性が青森市の実家に帰省するとそんな内容の手書きのビラが玄関先に置かれていたという。男性は帰省までに自主的に新型コロナウイルスへの感染を調べるPCR検査を2度受けいずれも陰性だった。帰省後もできるだけ自宅で過ごしていたという。

 大渕憲一・東北大学名誉教授(社会心理学)によると、新型コロナウイルスで顕在化した人間の攻撃性の一つに「制裁・報復」感情や「同一性」(自尊心)を動機とするタイプがある。政府から自宅待機の要請が出ている時に外出している人やマスクをしないで歩いている人を激しく非難する――そんな「自粛警察」がこれに当てはまるという。

この記事は有料記事です。

残り4982文字(全文5347文字)

大治朋子

編集委員(専門記者)

 1989年入社。サンデー毎日、社会部、ワシントン特派員、エルサレム特派員などを経て現職。英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所客員研究員。2017年から2年間休職しイスラエル・ヘルツェリア(IDC)学際研究所大学院(テロ対策&国土安全保障論、サイバーセキュリティ専攻)修了、シンクタンク「国際テロリズム研究所」(ICT)研修生。テルアビブ大学大学院(危機・トラウマ学)修了。防衛庁(当時)による個人情報不正収集・使用に関する報道で02、03年度新聞協会賞受賞。ボーン・上田記念国際記者賞など受賞。単著に「勝てないアメリカー『対テロ戦争』の日常」(岩波新書)、「アメリカ・メディア・ウォーズジャーナリズムの現在地」(講談社現代新書)など。