声なき声を捕捉せよ

「ポスト安倍」を決める永田町の論理と世論のズレ

平田崇浩・世論調査室長兼論説委員
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記者会見する安倍晋三首相=首相官邸で2020年8月28日、竹内幹撮影
記者会見する安倍晋三首相=首相官邸で2020年8月28日、竹内幹撮影

 安倍晋三首相が8月28日の記者会見で辞任を表明し、永田町は「ポスト安倍」政局に突入した。安倍首相が病院で検査を受けたのは同17日。その5日後の22日に社会調査研究センターと毎日新聞が実施した全国世論調査の結果には、首相の健康不安を受けた世論の変化が既に表れていた。

 調査は、携帯電話のショートメール機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせて行っている。今回、携帯調査に限って「あなたが次の首相にふさわしいと思う人を1人挙げてください」という問いを設けた。従来の電話世論調査ではあらかじめ何人かの選択肢を示して選んでもらう形になるため、その人選や選択肢の提示順などによって調査する側の先入観が影響してしまう恐れがある。自由に思いついた名前を書いてもらうことで、従来調査とは違った世論へのアプローチができるのではないかという試みである。

 この質問を初めて行ったのは6月20日の調査だった。そのときの結果は以下の通り。携帯回答者777人のうち10人以上が名前を挙げた人について順位付けした。カッコ内は、名前を挙げた人数が携帯回答者に占める割合。

 (1)石破茂自民党元幹事長  118人(15%)

 (2)安倍晋三首相       78人(10%)

 (3)河野太郎防衛相      55人 (7%)

 (3)吉村洋文大阪府知事    55人 (7%)

 (5)小泉進次郎環境相     37人 (5%)

 (6)橋下徹元大阪府知事    21人 (3%)

 (7)小池百合子東京都知事   17人 (2%)

 (8)岸田文雄自民党政調会長  15人 (2%)

 (8)枝野幸男立憲民主党代表  15人 (2%)

 (10)山本太郎れいわ新選組代表14人 (2%)

 (11)菅義偉官房長官     11人 (1%)

 6月調査では吉村大阪府知事の3位入りが目を引いた。新型コロナウイルス対応で注目されていた時期とはいえ、従来調査だったら回答の選択肢に入っていなかったかもしれない。

 次に今回の調査結果を見ていただきたい。携帯回答者数は735人だった。

 (1)石破茂自民党元幹事長 111人(15%)

 (2)河野太郎防衛相     83人(11%)

 (3)橋下徹元大阪府知事   45人 (6%)

 (4)安倍晋三首相      21人 (3%)

 (5)吉村洋文大阪府知事   20人 (3%)

 (6)小池百合子東京都知事  18人 (2%)

 (7)小泉進次郎環境相    17人 (2%)

 (8)岸田文雄自民党政調会長 15人 (2%)

 (8)枝野幸男立憲民主党代表 15人 (2%)

 (10)菅義偉官房長官    14人 (2%)

 大きな変化は安倍首相が6月の2位から4位に後退したことだ。来年9月で任期が切れる自民党総裁の「4選」どころか任期満了まで務めることも危ぶまれるようになった政治情勢…

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平田崇浩

世論調査室長兼論説委員

1967年生まれ。広島県三原市出身。89年入社。97年から政治部。さいたま支局長、世論調査室長、政治部編集委員、論説委員を経て2020年から2回目の世論調査室長。