情報社会の地殻変動

手嶋龍一・外交ジャーナリスト・作家
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手嶋龍一氏
手嶋龍一氏

 ホワイトハウスのかなたに望むペンタゴンから炎があがり、黒々とした煙が立ちのぼっている――。あの日の光景は、いまもわが脳裏に棲(す)みついたままだ。ハイジャック機はまずニューヨークの世界貿易センターを崩壊させ、続いて国防総省にも襲いかかった。

 「テロの世紀」の幕開けを告げる凶事――。筆者は現場から中継放送を続けていたのだが、果たしてそう見抜いていたのか、おぼつかない。だが、2001年9月11日の同時多発テロこそ、世界の風景を一変させた未曽有の事件だった。

 冷戦期の米国はソ連を主敵と見定め、クレムリンの意向さえ正確に掴(つか)めば国家の破滅は免れると考えていた。だが、9・11事件を機に、国際テロ組織こそ姿を見せない敵と見定めるようになる。安全保障の世界に重大な地殻変動をもたらしたのである。

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手嶋龍一

外交ジャーナリスト・作家

1949年生まれ。NHKワシントン支局長として同時多発テロ事件の11日間にわたる中継放送を担う。NHKから独立後、インテリジェンス小説「ウルトラ・ダラー」を上梓(じょうし)してベストセラーに。慶応大学教授としてインテリジェンス戦略論を担当。「たそがれゆく日米同盟」「ブラック・スワン降臨」(新潮社)「汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師」(マガジンハウス)など著書多数。