ポスト安倍に望む 「忖度」「やってる感」から「結果達成」へ

田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
  • 文字
  • 印刷
田中均氏=中村藍撮影
田中均氏=中村藍撮影

 安倍政権は幕を閉じ、今月半ばには自民党総裁選を経て新しい首相が誕生する。安倍首相は累次の選挙で支持を得て、7年8カ月という憲政史上最長の政権を維持したわけで、日本の政治経済の安定に大きな役割を果たした。一方で、その安倍政権を引き継ぐ新しい政権が取り組まなければならない困難な課題も山積している。

 新型コロナウイルス感染拡大防止と経済回復、経済財政運営の中長期的な対策、11月の大統領選挙後の米国政権への向き合い方、厳しさを加える米中対立への処し方、そして東京オリンピック・パラリンピック開催是非の判断など節目にきた重要課題は多い。これら課題はいずれも国民の幅広い理解がなければ進まない基本的な問題だ。新政権には、コロナ危機を通じ浮き彫りになった長期政権の弊害とでも言うべき幾つかの問題点をしっかりと認識し、乗り越え、政治への信頼を取り戻してほしいと思う。

指導者への国民の信頼の回復

 危機にあって何よりも重要だと思うのは、政治指導者が国民に信頼されていることだ。コロナ危機で最も評価されている世界の指導者の一人としてドイツのメルケル首相があげられているが、メルケル首相はコロナ感染防止のために自粛を求める際、自らの言葉で時間の制約なく国民に語り掛けた。指導者の信頼度は、特定の危機において自ら信じていることを自らの言葉で語り国民を説得することによって高まる。

 統治には国民が喜ぶことも国民に負担を強いることもいろいろある。統治は国民に歓迎されることだけを目指すわけではない。重要であるのは、国民に負担を強いなければいけないときに、確信をもって説明責任を果たすことができるかどうかだ。

 安倍政権がコロナ対策で十分な国民の信頼を得ることができなかったのは、今から考えれば持病の悪化で記者会見などの時間が十分とれなかったこともあろうが、例えばマスク配布、PCR検査の実施、Go To トラベル事業の前倒…

この記事は有料記事です。

残り2645文字(全文3443文字)

田中均

日本総合研究所国際戦略研究所理事長

1947年生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官、在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、05年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、10年10月に(株)日本総合研究所国際戦略研究所理事長に就任。06年4月より18年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、19年)、『日本外交の挑戦』(角川新書、15年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、09年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、09年)など。2021年3月よりTwitter開始(@TanakaDiplomat)。毎日リアルタイムで発信中。YouTubeチャンネル(@田中均の国際政治塾)。